かきくけコラム :「お坊さん、故郷を想う」02


obousan

毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
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姫路出身のお坊さん・なわたっせんさんの2回目です。お楽しみください。

02の想起「アングラ」

ソウルフードの裏表

前回の最後に、次回は「表」のソウルフードを、と予告しました。
姫路のソウルフードと聞いて、おそらく9割方のひめじん(姫路人)は、アレとアレを思い浮かべるのではないでしょうか。そう、アレとアレです。

ちなみに「表」というのは、前回に「ご当地ものではないのになぜか『故郷』が想起されるような食べ物」を仮に「裏ソウルフード」と定義したので、その逆を言います。

となると、困ったことが起こりました。そのうちの一つは、ちょっと裏表があやしくなってくるのです。

そうです、私が第一に想起するソウルフード、それはほかでもない「姫路名物・明石焼き風たこ焼き」です。現在は、姫路駅前の新しい地下街である「グランフェスタ」に、その店は存在します。

地下街の不思議

「明石焼き」と銘打っておきながら、しっかり「姫路名物」を語るとは、何て悩ましげな名前なのでしょうか。ポイントは、言うまでもなく「風」です。これは通常だし汁を付けて食べる明石焼きに、甘辛いソースをかけて食べることを指します。

ですので、もちろんソースを付けなければ「邪道」になりますし、それでは「風」を付ける意味がなくなります。それでは、明石で本物(?)を食べる時にもソースをかけたらいいのか、と言うと、不思議なことにそんなことはありません。あの地下街以外でソースをつけても、まったくソウルフード感が失われてしまうと感じるのは、きっと私だけではないでしょう。

私がはじめて「姫路名物・明石焼き風たこ焼き」を知ったのは、比較的遅い中学生の頃。連れて行ってくれた先輩から、「アングラ」という言葉とともにこの味を教えてもらいました。向かいには御座候の担担麺のお店があり、「世の中にはこんなに大きな餃子があるのか」とも驚いたものです。初めて降り立った姫路の地下街は、不思議でいっぱいでした。

かつて、駅前の再開発の工事のために、あのお店が地下から消えてしまったことがあります。私はその当時も姫路を離れたところで生活をしていたのですが、人づてに地下街の工事が行われると聞いて、いても立ってもいられなくなりました。

じゃあ、あの、あのお店はどうなるのだ……

ところが、帰郷して御幸通りを歩いていた時、目の前に、ありえない光景が広がりました。
あの「姫路名物・明石焼き風たこ焼き」が、地上のビルに移転していたのです!!

あの味からしばらく遠ざかることを覚悟していた私は、夕食前にもかかわらず、まるで生き別れた家族と再会したかのような感動をもって店内に駆け込みました。そして、迷わず「明石焼き風たこ焼き」を注文し、急いでソースをぬって口にふくみました。

……驚きました。何かが、違うのです。

場と記憶と魂

もちろん材料も味付けも変わっていないはずなので、「違う」と感じたのは私の錯覚かもしれません。しかし、その時に思いました。ソウルフードというものは、場と記憶と連動するものではないかと。

あの、姫路駅前のワンダー地下街に初めて降りた時のドキドキ感、明石焼きにソースを塗ることへの違和感やそれを見事に裏切られた驚き。あの味は、きっとそういった思い出とともに蘇ってくるのだと。卑近な例で言うと、ゆかた祭りで食べる焼きそばや甲子園のライトスタンドで飲むビールの味も、それに近いのかもしれません。

今年のお正月休みは、東京での仕事が慌ただしく、大晦日に姫路へ帰り、三日には東京へ戻らなくてはなりませんでした。姫路を満喫できなくとも「せめてあの味だけは…」と思った私は、時間の合間をぬって、駅前のグランフェスタへと足を運びました。残念なことに(と言うよりも当然ながら)、地下街のシャッターはすべて下りていましたが、不思議なことに、店の前の看板を見た時に「ああ、故郷に帰ってきたのだ」という感覚が、心の奥底(underground)から湧きあがってくるのを感じました。

次回は、もう一つの「表ソウルフード」である、アレそばにまつわる話をご紹介します。合掌

タコピア写真

文責:なわたっせん
 勤務先 親鸞仏教センター
 自坊  明泉寺 Facebookページ

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公開日 : 2016-1-21
最新更新日 : 2016-1-21