オススメ映画 紹介コラム “シネマ裏メニュー” Vol.1 『ナゴシノハラエ 』


シネマ裏メニュー

 追記情報 大原監督から、コラムの丁寧な感想とコメントを頂きました

ご挨拶 「シネマ裏メニュー」はじめました

こんにちは。イラストレーターの赤松かおりと申します。
4月から、姫路シネマクラブで映画の上映会を開催されている竹中啓二さんと共同で、オススメ映画紹介コラム「シネマ裏メニュー」を掲載させていただくことになりました。

いつも考えているのは、「世の中には、とんでもなく面白い映画がまだまだ埋もれている。なのに、TVでCMされているようなメジャーな作品しか知られていないのは、もったいなすぎる!」ということ。

そんな話を、仲良しの竹中さんとしていたところ、「だったら自分たちでおススメ映画を発掘して紹介しちゃおう」ということになり、他のてくてく運営員とも相談して「シネマ裏メニュー」をさっそくはじめることになりました。

なぜタイトルが「裏メニュー」なのかといいますと、当初「ごはんを食べるように映画をみよう」ということで「定食」という案がでていたのですが、私たちがオススメしたいのは定番外、アウトロー、アンダーグラウンドな作品が多いよね!?と話し合った結果、最終的に「裏メニュー」に落着きました。

竹中さんとは同じ映画をみていても、注目しているところが全然ちがうということで、それぞれ独自の視点でレビューを執筆させていただいております。

映画を見ることでわいたインスピレーションを、赤松は漫画にし、竹中さんはエッセイにまとめる、という形でとりあえずはスタートします。試行錯誤しながら、映画についての質問があれば答えたりもしていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

プロローグ漫画

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映画『ナゴシノハラエ』レビュー

映画『ナゴシノハラエ』は大原とき緒監督の長編映画です。姫路市内では姫路シネマクラブ主催で、2015年11月に「ブックカフェギャラリーQuiet Holiday」と、2016年の1月に福崎町の「楽や」さんで上映会が開催されています。

作家・夢野久作の小説『瓶詰の地獄』をモチーフに兄妹の禁断のラブストーリーが展開されるという衝撃的な物語です。
赤松も大原監督のトークイベントに参加しましたが、竹中さんのエッセイにもあるとおり、とてもチャーミングな方でした。

公式サイト→映画『ナゴシノハラエ』

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エッセイ「ほっとけない、困った映画――『ナゴシノハラエ』」(竹中啓二)

例えば、あなたは特に目的もなく道を歩いていたとする。すると草むらから何やらにゃーにゃー鳴く声が聞こえてくる。近づいてみると、段ボールに入った子猫が。あまりの可愛らしさに、連れて帰って飼おうか飼うまいか悩む。ありがちなシチュエーションである。

しかし、私の原体験と言えばちと違う。中学生の頃だ。途中までは同じ。にゃーにゃー鳴く声に引かれてみれば、段ボールに子猫がいた。覗き込むと――ほぼ胎児の状態の猫が横たわっている。猫というより裸のネズミ。体を震わせながら、ひときわ鋭くにゃーにゃー鳴くのである。私は、逃げた。

冷静に考えて、どちらを救うかとなれば、成長した子猫よりも、あの胎児にも似た猫のほうだろう。ただ、私は出会いがしらの生死を内包する生々しさに、切実さに、耐えきれなかったのだ。

――この二匹の差は何だろう?

拾って帰りたい可愛らしさ、逃げたい生々しさ。『ナゴシノハラエ』はこの境界線上よりやや「拾って帰りたい」側にある困った映画だ。今回は放っておけなかった、とは不遜になるか。

何の因果か地元の姫路で、自主映画の自主上映をそれなりに多く主催してしまっている、プロではないが普通の映画ファンとはいえない、宙ぶらりんな立ち位置の私に言われる筋合いはない。

「私の恋人は兄だ」冒頭での主人公・翠(すい)の独白どおり、彼女は兄・舜(しゅん)と恋愛関係にある。ある日、友人の瑞穂(みずほ)が所属する劇団の稽古場を訪れた翠は、その内容に衝撃を受け倒れてしまう。兄との禁断の関係を突き付けられたのだ。演目は、夢野久作『瓶詰の地獄』。無人島に流れ着いた兄と妹が、男と女に変わっていく様を描いた物語である――。

次第に映画は混迷を極める。誰もが誰かの身代わりとして誰かを愛している、という映画の構造(という文章がすでに混乱している)。あまりに粗削りな画作り(次作はカメラマンと録音技師を雇ってほしい、と監督には直訴した)。軟弱な鑑賞者は撃沈するかもしれない。

しかし、このまま終わってもらっては困る。ラスト近く、失意の主人公・翠が川辺を下るところで、映画を収束させる決定的な画が提示されてしまう。何といっても映画は「画」なのだ。今までの混乱はなんだったのか。

真摯ではある。ただその道程は危なっかしすぎる。胎児にも似た子猫の鳴き声のよう――。
なぜ、このような現象が起きるのか。答えは大原とき緒監督自身にある。

私の実体験から言えば、魅かれる作品は監督そのものであることが多い。作品に向かい合えば合うほど、作品は監督の分身と化す。

ここで、大原監督のTwitterを引用して締めることにする。2015年7月20日・渋谷アップリンクでの上映に向けて宣伝活動をしていたときに、つぶやかれたもの。

「アップリンクでチラシを配り中です~前売り券も持ってますので、ナゴシノハラエTシャツ着ているものを見かけたら、声をかけてくださいね!」

しかし、状況は芳しくなかったのか次の発言に続く。

「今日も、また、声かけていただけなかった…Tシャツの『私の恋人は兄だ』がまずいのか…」

あなたは、このまま彼女を放っておけるだろうか?

漫画 「恋は・・・」(赤松かおり)

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最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
次回は濱口竜介監督の映画『ハッピーアワー』の予定です。

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2016/04/08 追記 「大原監督から、コラムの丁寧な感想とコメントを頂きました」

赤松さん、こんにちは!

イラスト、ありがとうございました!とても、楽しませていただきました!電車の中でも笑ってしまい、怪しい人になっておりました。

あのずぶ濡れの雨のシーンは、前日にすごく悩んで撮影したシーンでした。このままだと翠が、男性からみて可愛いだけの女で終わってしまう、それは嫌だという思いで、あのようなシーンになりました。

翠役の薬袋いづみさんは、念入りにメイクをして臨みたいと現場入りしたのですが、時間を取って話をして納得し、あのような演技で応えてくださいました。
女性もですが、男性から見たあのシーンの感想に興味があります。
あんな風に描いていただきまして、嬉しかったです!

大原とき緒

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公開日 : 2016-4-1
最新更新日 : 2016-4-8