かきくけコラム :「ブックブック こんにちは」08


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毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。

「陽文庫-アキラブンコ」のみずいけさんと、ブックカフェ・トキシラズの山本さんがかわりばんこにつづる、本にまつわるコラム「ブックブック こんにちは」、8回目は陽文庫みずいけさんです。

08のブック

「愛と欲望の雑談」雨宮まみ・岸政彦

女であることに素直に向き合えなかった自身の半生を書いた『女子をこじらせて』(2011,ポット出版)の著者である雨宮まみさんと、社会学者岸政彦さんの対談本です。

自分には恋愛とかは許されていない、そういうことを話題にすることすら気持ち悪い人間なんだと思っていた雨宮さん。マイノリティーと言われる人たちに関心をもち、「日常に転がる分析できないもの」を集めた『断片的なものの社会学』で、社会学の新たな扉を開いた岸政彦さん。岸政彦さんは大学教授ということもあり、どちらかというと良識派。雨宮まみさんは行動は男性ぽいですが、脳内は真女子という感じで、雨宮さんの素朴な疑問に岸先生が答えていくというような形式で話は進みます。

安定のミシマ社から、少しギョッとするようなタイトルですが、対談本で大変読みやすく、それでいてなかなか考えさせられる箇所が多い本だと思います。ページ数も100ページに満たず、片手でも持てるような、シンプルな作りになっています。カバーは「コーヒーと一冊」シリーズだからか、珈琲色。

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発売日: 2016年8月
著者: 雨宮まみ・岸政彦
出版社: ミシマ社
サイズ: 単行本
ISBN: 978-4-903908-80-9

目次には、
●恋愛しないといけないの?
●浮気はダメ!
●言わなくてもわかってくれる?
●人が欲しがっているものを、私も欲しい
●「アナーキーな欲望のほうが、より本当の欲望」という妄想
など、少々過激な言葉が並びます。

雨宮さんは、恋についてや女子としての自分がどう見られながら生きているか、同性からの視線と自分がその中でどのように生きていくかをとてもよく考えられている方です。本書の中にも書かれてますが、「雨宮まみ」が雨宮さん自身の中に3人くらいいて、1号が欲望で突っ走る雨宮まみ、2号がそれを後から見てダメ出しをする雨宮まみ、3号はそれを言語化する雨宮まみ、自己嫌悪のタイムラグがあって、それを見ている聞いているのが外野はとても面白いのだろうな〜と。

なんとなく流したい、目を背けたいものに正面から向かっている雨宮さんの人間性がよくわかります。

女性は複雑系

雨宮さんはいろんな印象的な言葉を書かれています。
●女に生まれてよかったと思ってるのに「女なんかに生まれなければよかった」と思わされてる。この状況に腹が立つ
●添い遂げる(結婚の)苦労は買ってでもしたい
●結婚していない時期は、何に向かって生きているのかわからない、「先の定まらないモラトリアム感」がつらい。

並べると、ドキっとするような言葉ばかりで、女性が少し恐ろしく感じられます。

昔、TVで見たインドか東南アジアの山奥にいた30数回結婚した初老の男性が「そんなに何回も結婚できた秘訣はなんですか!?」と女性レポーターから聞かれ、「女性をきたないと思わないことです」と言っていたのを、不謹慎?な感じがしますが、本書を読んでいるとほんの少しだけ思い出してしまいました。女性の頭の中を覗くのは怖い…

だいたいの人は当たり前なのですが、社会の実像というのはわかんない感じになっていて、自分のまわりではとか、ウチの会社の人達の中では…とか、限りある母集団の中の比較によって、いろんなイメージや認識を掴みとっていると思うのです。なので、年齢が違う、ジャンルが違う、趣味嗜好が違う人達の集まりでは当たり前だと思っていることが随分違うという。

社会学系の本を読んでいると、そのへんの認識が整地されるような感覚を覚えます。こんな風に感じてて良かったんだ、とか。

男性以上に女性は複雑系というか、男性は割と人生観が仕事がメインのワンプレートでドン!という感じですが、女性は小鉢を寄せ集めて人生を構築していくようなところがあると思うのです。「恋愛」「結婚」などの人生の要素を、感情にとらわれずに考え直すことは、認知の整理をするのに役立つかもしれません。知れば知るほど、知りたくないことだらけの女性の頭の中身。本質ってなんやろう?逆に本質だと思ってたものが本質じゃないかも…と少し頭のエクササイズになるような、考え方の幅が少し広がるような本です。

雨宮さんはきっと性格がいい

なかなか怖いことばかりを言う雨宮さんですが、雨宮さんはこんなことも言っています。

自分が自分らしく、小さなことにとらわれず生きること。そして誰かに幸せにしてもらうのではなく、自分が得てきたもので相手を楽しませられるような人間になること。それはたとえ結婚できなかったとしても、決して無駄なことではないし、結婚する/しないに関わらず、自分の人生を豊かにしてくれるもののような気がししています。
雨宮まみ『ずっと独身でいるつもり?』(KKベストセラーズ,2013,p.221)

性格が良い方だなぁと思いました。特に「自分が得てきたもので相手を楽しませられるような人間になること」という部分。自分のことではなく、相手のことに思いを馳せる、こんなことなかなか言えないんではないでしょうか。

好きじゃないものには快感がない、好きなものには素直に寄っていきたいという雨宮さん。

よかったらどこかで本書を手にとってみて、雨宮まみさんのことを知ってあげてください。その一助になれれば嬉しいです。

おわり

文:みずいけあきら(陽文庫)
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公開日 : 2016-11-9
最新更新日 : 2016-11-9