街の記録01:街をみどりに変えていく「姫路駅北にぎわい交流広場 」キャッスルガーデン 姫路

リビングソイル研究所の西山さんを中心に、姫路マチヅカイ大学の参加者、ボランティア、有志のみなさんによる、姫路の街をより素敵に快適に過ごしやすくするための取り組みがはじまっています。

2017年2月に実施された取り組みは告知として一度ご紹介させていただきました。

2018年2月にも2日間にわたり活動が行われました。
多くのみなさんに知っていただければと思う活動なので、「街の記録」としててくてくでも活動記録として残し、ご紹介していきたいと思います。

まちの中心の居心地がかわる緑の提案

2017年に行政主催のまちづくりのイベント、姫路マチヅカイ大学で
「駅前で何かやりたいこと」
というキーワードから始まったキャッスルガーデンでの緑化。

2017年に1箇所。
2018年2月、新たに1箇所市民参加型の緑の取組をおこないました。

そもそもこの取組をなぜ始めようと思ったかというと、駅前開発が終わり、せっかく良い空間ができたのに、植えられている樹木が弱っていたり、環境に合わない樹種が選ばれていて、緑が残念な状態で、場所の良さが生きていないと感じたからです。

1日に数万人が通り目にする場所。街の中心であまりにもったいない。そう思ったことがきっかけでした。

パブリックスペースの緑のあり方に思うこと

仕事で庭をつくったり、店舗や企業の植栽をする際に「あの場所やお店が好き、あそこみたいにしたいというイメージありますか?」という質問をしています。しかしその質問の返答で、具体的なイメージが返ってくることがほとんどありません。

確かに自分で街中で「良いな」と思う場所を探しても、山などの自然の中は別として少ないなと思う。

緑があっていいな。
こんな暮らしをしたいという実例が少ないように思いますし、身近なよく行く店舗などでそういった場所も少ないのかもしれません。

キャッスルガーデンでの目的の一つとして、公共空間でより豊かな時間を、多くの人が過ごしたいと思ういい場所にしていくことがあります。
ハードがとても良く整備されているので、緑が変わっていけば、ここ良いなと思われる公共空間になるのではないかと思っています。

大切なのは育てること

今回植栽をした場所も、ただ植えてきれいになった。おしまい。ではなく、最初が小さくて寂しいそこで植物が環境に適応しながら育って生長していくことを考えて植えています。植えて育つものもあれば、枯れてしまうものもあるでしょう。これまでの公共の場では維持していく管理があたりまでしたが、この場所は変化していくように手入れしていく予定です。

いくらよく植えても育て方次第で良くもなれば悪くもなります。色んな人に関わってもらいながら、この場所をより居心地のいい緑が育っていく場として手入れしていければ良いなと思っています。

山と街をつなぐ

前回の「えきまえ里山」から引き続き、今回も流通している植木を買ってきて植えるのではなく、姫路市内で自生する植物を山や農地周辺などで掘りとって、街中で姫路の植生を再現することをコンセプトとしてやっています。

山歩きが好きで植物に詳しい方なら、様々な木々が季節によって花が咲いて、実がみのり、紅葉して落葉し、芽吹くという変化しを楽しめますが、普通は毎日山歩きをするような方以外は難しいでしょう。

姫路の植物を使っているのは駅前の人通りが多い場所で、山にある植物が見せる様々な変化をもっと近い日常に感じてもらえるようにできるからです。
暮らす地域の中にあるけど、知る機会がないものに目を向けて、その良さが伝われば、近所の野山を歩くときの目線も変わるでしょう。

また、その植物が育っている山はたいてい価値がないと思われ、放置されています。

秋に紅葉して葉が散る落葉広葉樹の多い山(里山)は今、活用されることがなくなり、人が入ることもなくなっています。


このような山でも、生きたまま移植して街中で育てることが定着すれば、生えている樹木に価値がつき、流通し街中で植えられることが増えるかもしれません。そうなれば、整備される里山も少しずつは増えるでしょうし、一つの仕事を生み出すことにもなります。里山と街をつなぎ、都市と自然の2つが切り離されないように

そういうふうに楽しんでもらいつつ、その先には山の手入れや山の価値の再発見などにつながればと思い自生する植物を使っています。

山に植物を掘り取りに行く

使う樹木や植える場所(キャッスルガーデン内)などを2017年から計画し、2018年1月から実際に山に今回使う植物を探しに行きました。

使う植物は前回のえきまえ里山とはまた別の場所、姫路市の最北端、山田町の山裾から掘りとってきました。
自生する植物を植えると言っても、大きすぎて移動ができないものや、大木ばかりの山になると、暗すぎてちょうどいいサイズの使いたいような植物が見つからないなど、条件が難しいのですが、今回はちょうどいい場所があり、そこから掘りとりました。

今回の場所は、山すそ、農地の畦の横で、ちょうど数年前に全体を切りひらいて明るくなった場所に育った植物がある場所でした。
品種も多く、サイズも丁度良いサイズ(高木で4~5メートル)と条件がそろっていました。

高木低木下草を合わせて23種類。


できるだけ多様なものを選んで、それを持っていって現地でどれにするか選んでいくスタイルにしました。

堀取りは30本ほど。2日間ほどかけて、掘り出しました。堀取りや運搬、仮植えなど作業がとても必要で、時間がかかってしまいます。ここはこれからの課題です。

市民参加型植栽

キャッスルガーデンでの作業は2018年2月17日、18日の2日間。
両日共、SNSで少し告知しただけでしたが大勢の参加者の方が来てくれました。

キャッスルガーデン内で植物が植えられている場所は、全てコンクリートのプランターのようになっています。
そのプランターがちゃんと排水できているかどうかを確認することがまず大切で、前回のえきまえ里山の際も、排水に問題ありだったので、排水がうまくできるように改善することにかなり時間がかかってしまいました。

前回の件があったので、今回も排水溝を確認しておいて問題なさそうであれば、そのまま翌日の植栽でいいかなと思っていましたが、土を出してみてみると、排水のパイプが少し高くついていて、排水がうまくできていない。

結局参加の皆さんと一緒に土を全部出して、排水用のメッシュのパイプを入れて排水を改善。
初日はその作業がメインでした。

植える日

みどりを育てる人を育む場

翌日は土壌改良から植える所、仕上げまで山に仮植えしている樹木の堀取りから始まって、キャッスルガーデン内に運びます。

まずはキャッスルガーデン内に樹木の運び込み。一般の人が通るルート以外なく、運搬が難点。手伝ってくれる方が多くて助かりました。


前日から引き続き参加してくれている方が多かったのですが、なぜやるのか、どんなふうに植えるとこの場所が良くなるか。という説明をします。

今回のプロジェクトは「育てる人が増えていくこと」を目標の一つにしているので、植える作業してもらうだけでなく初めての方でも、どういう理由でこの場所にこの木を植えるのか、どう育てていくかを説明して共有した上で、考えてもらい改めて配置してもらいます。

その後は土壌改良作業。もともと植えられていた植物が弱っている原因の一つに土の状態の悪さがあります。2箇所しかしていませんが、おそらく今植わっているものはすべて同じ理由で弱っている。そうだとすると簡単に改善はできません。土の状態も、植え方も樹種もすべて見直してやり直す必要があるでしょう。

土壌改良の資材もすべて姫路市内で育った草・落ち葉などで作った堆肥。それをできるだけ深く混ぜ込みます。

なぜこの位置にこの木を植えるのか。

配置したあとは植え方のレクチャー。植える際にどういった点を注意して植えるか。
「なんでも枯らしてしまう人とうまく育てることができる人の違い」など幾つか実例を混ぜながら一本植えて、それからは1本ずつ、様子を見ながら参加者の方々に植えてもらいました。

広大な土地に木を植えるのではなく、狭いスペースに植える場合、特にその後の生育も考えてから植える必要があります。初期にスカスカだと最初が寂しすぎるし、ボリュームありすぎるとその後の生長に合わせて間引きが多く必要になります。適量を、生長を考えて植える必要があります。

今回のように、植える経験をする機会は日常ほとんどないと思うので、こんな機会を積み重ねて自分がうまく育てる事ができるという自信をつけて、自宅周辺でも緑を増やしていってもらいたいものです。

順番に一本ずつ向き、角度、位置など確認しながら植えて、しっかり植え付け。


最後に水を使って土と根鉢のスペースがしっかり密着するようにします。

一度やれば覚えることですが、なんでも枯らしちゃう人はふわっと植えて土と鉢の間がスカスカ。
これだと育ちません。一度体験したので参加の方は皆さん植え方が理由で枯れることはなくなったのではないかと思います。

 

思い入れのある自分の場所をつくる

当日は0歳から60代の方まで様々な世代の方が参加してくれました。

0歳から小学生以下の子どもたちも多く参加してくれました。


小さい子どもたちには意味を伝えてはいませんが、経験として公共の場に自分が関わった記憶が何かしら残ってくれると良いなと思ってます。

これは大人にも言えることですし、自分自身でも言えることですが、公共空間はただ使うだけのユーザー。消費者であると言えるかもしれません。それが今回のような自分たちで関わって緑を植えたり、育てたりしていくことで、消費者ではなく、自分たちが作っていく主体になります。

自分たちで植えた、作っていく場所は、これまでと同じ場所でなく、特別な場所にきっとなります。
姫路駅前に来て、用がなくても少し「どうなっているかな?」と殆どの方が行くようになって、日常の様子や手入れの必要性など、情報共有できるようにしておけば、いい状態を維持することも簡単になるはずです。

クレーマーからプレーヤーに

今の緑に関する街の問題の多くはクレームへの対応だと思います。

落ち葉、雑草、大きく茂った樹木など。それぞれが行政へのクレームに繋がります。

クレーム対応で、木が紅葉の前にバッサリ切られる。効率は良いかもしれませんが、バッサリ切られた樹木はその後、生育していく中で、ボサボサに茂って余計に見苦しくなり、また切らないといけなくなる。
その繰り返し…。

公園、街路樹など公共の場であれば、公共の場であるので、行政が管理するものとなっています。
技術的に優れた業者のかたが担当しても、公共の剪定などは年1回。年1回だとなかなかできることは少ないでしょう。

植物も土も手入れは少しずつ、何度もやるほうがきれいに育てることができます。

そうするには行政には難しい。できる人で近くに暮らす人が自分の場所としてうまく維持管理できれば、その地域の緑を最もきれいに育てていく方法です。

これは公共の場だけでなく、庭というプライベートな場所であっても同じです。年1回プロに手入れしてもらうより、月に1回自分で時間をかけて手入れするほうが、いい状態をつくれます。

自分たちが主体となって関わっていれば、クレームを言う相手はいなくなります。クレームではなく、より良くしていくための意見を持っている人は自分もプレーヤーになって活動に参加して変えていくことができるようになる。そうなるのが街としても理想的ではないでしょうか。

プロや業者は市民ができない高木の手入れなど、扱いが難しいものだけを手入れしていく。

今の時代の暮らしに合った緑のかたち

今回の場所も、これからの庭や緑、緑地の管理の仕方のモデルになる形で植えています。
今のライフスタイルに合うように、それほど手がかからず、作業が大変すぎず、費用もかかりすぎない形で作っています。

今回参加してくれた方も、主要なメンバーもキャッスルガーデンの作業がメインの仕事ではなく、あくまで空いた時間で関わっています。毎日や毎週末に作業が必要だと、継続が難しくなります。

今回のスペースは幅70cm,、長さが5mと狭いスペースだったので、前回と同じように、ほぼ雑草が生えず、最小限の水やりで済むように保水力の高い土に改良することで、今の人の暮らしの中にあっても負担にならない形にしています。

土に光がささないように、土の表面をウッドチップで覆い、木々の影を落とすようにする。

昨年のスペースも、手入れの時間は年間で1時間ほどでしょうか。剪定や草花の切り戻しなど二時間はかかりますが、その程度であれば、2ヶ月に1度集まって作業するのでも十分対応できます。

このように環境を作ってあげれば今の暮らしの中に緑があっても負担がかからないようにできます。
「あ。こんな感じでできるなら自分にもできるかも」実際に見てもらったり、体験してもらうとそう思ってもらえるのではないかと思います。

ここがそんな場所になれば良いなという想いを込めて、今回の作業は終了しました。

一緒に育てていきましょう。

キャッスルガーデン内には、いくつか植栽ますがありますが、植物はどれも弱っており、放置していて元気になってくる状態ではありません。

シラカシ2本、ヤマザクラ、イロハモミジ。ヒメシャラ。高木はこれだけですが、どれもが弱っています。

このままこれらを放置するのではなく、キャッスルガーデン内は全部変える事ができるといいなと思ってます。

私たちができるのは少しずつですが、このスペース全体の緑を同じようなコンセプトで育てていければ今とは全く違った場所になるのではないかと考えています。
ここを通る大勢の人や座って休む人。
買い物に来た人にとって「良いな」と思える場所にしていけるように、今後も緑の活動を続けていきます。

まだ活動名も決まっていませんが、姫路駅前に行った際は覗いてみてください。
興味がある方は活動にもぜひ参加してください。

 

街をみどりに変えていく(名前が決まってないので仮)

中心メンバー

  • 西山 雄太
  • 石山 恵信:姫路市まちづくり振興機構 好古園
  • 黒木 大亮:lthty  建築士
  • 三浦 豊   :森の案内人

 

連絡先
info@livingsoil.jp

西山雄太

リビングソイル研究所 

兵庫県出身。格闘技をしていた学生時代の体づくりの経験から、食と体の結びつきを実感し、食や栄養に関心を抱く。大学卒業後、食に関わる企業に入社。退社後は海外を旅し、各国の食や食習慣などに興味を持つ。帰国後は食の根本である「農」に着目、NPOで農作物の流通にたずさわりながら、自身で作物の栽培を開始。

その後、オーストラリアへ渡り、 有機農業の現場や農場、研究機関、学校などで学ぶ。帰国後、農業の現場だけでなく公園や家庭などでも土の管理がおこなわれていないことを知り、土の再生に取り組む「リビングソイル研究所」を設立。土の再生による農業の現場や住環境の改善など、さまざまな社会問題の解決に取り組んでいる。

http://livingsoil.jp

文責:リビングソイル研究所 西山雄太 補足など:OTETEお手伝い

写真:西松史純(西松写真撮影事務所)

西山 雄太

西山 雄太

兵庫県出身。

格闘技をしていた学生時代の体づくりの経験から、食と体の結びつきを実感し、食や栄養に関心を抱く。大学卒業後、食に関わる企業に入社。退社後は海外を旅し、各国の食や食習慣などに興味を持つ。帰国後は食の根本である「農」に着目、NPOで農作物の流通にたずさわりながら、自身で作物の栽培を開始。

その後、オーストラリアへ渡り、 有機農業の現場や農場、研究機関、学校などで学ぶ。帰国後、農業の現場だけでなく公園や家庭などでも土の管理がおこなわれていないことを知り、土の再生に取り組む「リビングソイル研究所」を設立。土の再生による農業の現場や住環境の改善など、さまざまな社会問題の解決に取り組んでいる。

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