毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
小さなころから本好きで、常に本を持ち歩く子供だったという姫路在住のイラストレーター、赤松かおりさんによる、大人になってからこそ読みたい子供の本、「大人にも響く子どもの本」はじまりますー。
第7の発見 外見に自信がない人へ:『オズのオズマ姫』1907
2019年に80周年を迎える映画や、ミュージカル「ウィキッド」にもなっている、『オズの魔法使い』シリーズの第3作、『オズのオズマ姫』からの言葉をご紹介します。
<あらすじ>
ドロシーは嵐で船が漂流して、黄色いめんどりのビリーナと一緒に海に落ち、「エヴ」という魔法の国にたどりつきました。
そこで、エヴの王妃さまと子供たちが呪いをかけられて、地底のノームの国に閉じ込められていると知ります。
ドロシーは、ビリーナ、オズマ姫、かかし、ブリキのきこり、おくびょうライオン、はらぺこタイガー、ロボットのチクタクといった仲間たちと、エヴの王妃さまを救うため冒険に出かけます。
<心に響く言葉>
「おまえは、どこかかわいらしいところがあるわね。ちっとも美人ではないんだけど、
あたくしの持っている三十の頭にはない、独特の愛嬌があるわ。
だからおまえの頭をもらって、かわりに二十六番をさげわたしましょう。」
「いやよ、そんなのまっぴらだわ!」ドロシーはさけびました。
(中略)
「わたしは、人がおはらいばこにしたものをもらったりしないの。自分の頭がいいわ。」『オズのオズマ姫』ライマン・ブランク・ボーム著、ないとうふみこ訳、復刊ドットコム 1907 p73-74
『オズのオズマ姫』には、奇想天外なキャラクターがたくさん登場するのですが、とくにクセが強いのが、ラングイディア姫。なんと美人の頭を30個コレクションしていて、毎日好きな頭に取り換えて楽しんでいるのです。
ラングイディア姫は、ドロシーの顔を見て「美人ではない」とけなしつつも、独特の愛嬌があるから自分のコレクションの二十六番と交換しろと迫ります。
ラングイディア姫の申し出に「美人の顔なら取り換えてもいいかも」と思ってしまいそうですが、ドロシーは「人のお古の頭(顔)なんていりません。自分のがいいんです」ときっぱりと断り、誰に容姿を認められなかろうが、そのままの私でいいと言います。
「理屈じゃなくて、自分の顔じゃなきゃダメなんだ!」と自分で自分を肯定するドロシーはカッコよくて、読む人を励ましてくれます。
おとぎ話には、白雪姫や眠り姫のように、待っていたら王子様が呪いを解きに来てくれるというヒロインがよく登場します。ですが、ドロシーは他の人たちの呪いまで自ら解きにいくのです。
自分で運命を切り開ける人は、他人の美醜の評価になんて惑わされません。
そこには価値をおいていなくて、自分は自分で問題を解決できるという自信があるのです。
人にどう見られるかが大事になっているときというのは、自分で自分の人生を幸せにできないと思っているので、周りの人の評価や、他人にどう見えるかばかりが気になります。
現代の私達が、インスタなどで写真を加工して盛ってしまうのも、「そのままの自分じゃカッコ悪い」と本人が思ってしまうからだと思います。
ちがう人になって何かをしようとしたり、
ちがう人のふりをしたりして、たとえ何かを得られても楽しくありません。
そのままの自分にできることをやらないと、いつまでたっても自信がつきません。
ドロシーの物語を読んでいると、
今の自分のままを100%最大限に生かして人生を切り開いています。
それこそがドロシーの強さだと思います。
そのままの自分のことを好きだと思えたら、相手も自分と同じだと思えるので、自然と他人も大事にできます。
外見に自信がないと思う方にも、きっとドロシーの物語は勇気を与えてくれます。
文責:赤松かおり
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