かきくけコラム :「ブックブック こんにちは」43

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毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。

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「陽文庫-アキラブンコ」のみずいけさんと、ブックカフェ・トキシラズの山本さんがかわりばんこにつづる、本にまつわるコラム「ブックブック こんにちは」、43回目は陽文庫みずいけさんです。

栗原康さんという人

今回紹介する本の筆者の栗原康さんは、現在おそらく39歳か40歳。ネットで画像検索すると、いまどきの若者という感じの塩顔(塩顔って元々どんな顔をいうのかイマイチわかりませんが…)で、大学→大学院生を経て、無職の期間もけっこうあり…といった感じでしょうか。現在は東北芸術工科大学の非常勤講師をされているみたいで、現に本を書いていたり、全く何も金銭を得る経済活動をしていないわけではなさそうです。

政治学者なのかなんなのか…。専門は一応「アナキズム研究」。僕が大学のゼミを選ぶときに、やる気も何もなかったけれど一応社会思想史のゼミ室を訪ねたら、教授の本棚に「アナキズム」というタイトルの本を見つけ、「これだ!」と思って、そのゼミに決めたのを思い出しました。結局いろいろあり、社会思想史をちゃんと学ぶこともなかったのですが、とりあえず当時売れていた?流行っていた?「ソフィーの世界」という本でゼミの学習をしていたのを覚えています。

はたらかないで、たらふく食べたい

そんな栗原さんの本のタイトルを見て、ぴぴーんときました。そのタイトルは『はたらかないで、たらふく食べたい―「生の負債」からの解放宣言』。まさにその通り!と膝を打つようなタイトルです。

毎日だいたい決まった時間に起きて、身支度を整え、とりあえず職場にいく。
一応勤めを果たさないといけないと思い、自分なりにではあるが多少気張った感じで一通り職務をこなす。
帰ったら、一応汚れた衣服は洗濯かごに入れて、ご飯を食べる。

全ては一応ちゃんとしているといえばしているのですが、別に本当にそうしたいかといえばそうでもない。本当は朝はもっと寝ていたいし、ご飯もテキトーな時間に食べたいし、ちょっと家の周りに出るくらいなら、パンツ一枚で出たいし、そもそもなるべく家では裸でいたい。

本当は、僕も「はたらかないけど、たらふく食べたい」。これが本音である。

そういえば学生の頃、就職活動が差し迫り、連れと自己分析や志望動機やらについて話していたとき(自己分析は本当は自分が何をしたいのかを考える作業、たぶん…)、『俺らは「何もしたくない」というのが結論だよな』ということを話していました。先に就活をしていた先輩も、『みんな働きたいですって面接にいくけど、「働きたい」なんか嘘や!』と言っていましたが。

と、ここまで書いたのですが、その『はたらかないで、たらふく食べたい』は今回は手に入らず、同じ栗原さんの『執念深い貧乏性』をご紹介します。

43のブック

「執念深い貧乏性」栗原康

発売: 2019/04/25
著者: 栗原康
出版社: 文藝春秋
サイズ: 四六判
ページ数: 277ページ
ISBN: 978-4163909349

本書の目次は、

●それより、胃の調子がきょうもよくないんだ
●そんな自分にエクスタシー!!!
●われわれにこれ以上はたらけというのは、死ねといっているのとおなじことだ
●東京オリンピックだって?ジュリアナ東京だ、このやろう!
●一揆だべ!鼻の命はノーフューチャー

と、並んでいて、目次を読んでもよくわからんかと思いますが、今の社会を変えるのは難しいけれど、とにかく何かしら一矢報いたいという著者の思いはひしひしと伝わってきます。(やぶれかぶれではありますが…)

アナキズムについて理解があると全編わりと楽しく読めるかと思います。
ちなみにアナキズムとはざっくりいうと、何ものにも縛られないとか支配されないとか、そんな意味でしょうか。

ちなみに本の出だしは
「チクショウ、チクショウ、チクショウ、チクショウ、チクショウ、チクショウ、チクショ〜〜ウ!」

著者が賢いのかバカなのか、もはやわかりませんが、こんな人が僕はとっても好きです。
成功している人とかお金持ってる人、モテる人や、何かしらうまくいっている人の話を聞いて何が面白いのでしょうか。(僕はまっっったく面白くありません!)

明治の小説ですか?みたいな調子の文体で、この本はまぁ…読んでも面白いと思える人は少ないかもしれませんので、なんとなく興味持たれた方は「はたらかないけど、たらふく食べたい」を読んでみることを、そっとお勧めします。

おわり

《追記》
最近、夢にやたらと「変態仮面」(女性の下着を頭に被ると、ミラクルパワーを発揮する正義の?変態ヒーロー。2013年に鈴木亮平さん主役で実写映画化)が出てくるなぁと思ったら、この本で栗原さんが変態仮面について言及していたからでした。変態仮面よく流行りました。男子の中だけだろうけど。

文:みずいけあきら(陽文庫)
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あさのは商店

あさのは商店

姫路生まれ・姫路そだち。姫路→大阪→徳島→姫路。
肌の弱い自分が必要なものを近くで買えるとうれしいなーと、肌にやさしい日用品「あさのは商店」をしています。
趣味は、ウクレレ・縫い物・言葉の観察など。

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