オススメ映画紹介コラム”シネマ裏メニュー”vol.4『WAT2016 世界のアニメーションシアター』

シネマ裏メニュー

第4回目は『WAT2016 世界のアニメーションシアター』

オススメ映画紹介コラム「シネマ裏メニュー」も第4回目となりました。

今回ご紹介するのは、海外の有名映画祭などで好評の短編アニメーションの特集『WAT2016 世界のアニメーションシアター』です。

アニメーションって、イマジネーションの宝庫ですよね。

あのひとつの世界を完成させるために、膨大なお金と、
膨大な人の知恵と、膨大な人の努力が注がれているのにも関わらず、1000円ぐらいで
みることができ、わくわくさせてくれるのですから、ありがたさに手を合わせたくなります・・・。

しかも、今回はなかなか見られない海外作品の特集。

2016年8月5日、6日に姫路ブックカフェギャラリーQuietHolidayでの短編アニメーション上映会「Aninmation Runs!vol.12」で上映されます。
A、Bの2プログラムあり、Aプログラムは「いろいろな愛を描くアニメーション」、
そしてBプログラムは「社会的な視点」をもつアニメーションがテーマです。

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©WAT2016

会場:
ブックカフェギャラリーQuiet Holiday
http://quietholiday.net/

日時:
■2016年8月5日(金)
①18:00~ Aプログラム ②19:30~ Bプログラム

■2016年8月6日(土)
①13:30~ Aプログラム ②15:00~ Bプログラム

料金:
1プログラム 1000円
2プログラム 1600円
(+1ドリンクオーダー要)

※特別プログラムのため日程、料金を変更しております。ご了承ください。

Skypeトーク
8/5(金) 伊藤裕美氏(オフィスH 〈アッシュ〉代表)

公式サイト→『WAT2016』

WAT 2016 世界のアニメーションシアター / Animation Runs VOL.12 (WAT2016姫路開催情報) の詳細はこちら

エッセイ「広い世界と、自分自身に向かい合う――『WAT2016 世界のアニメーションシアター』」(竹中啓二)

今年、2016年も広島国際アニメーションフェスティバルが開催される。

広島は国際アニメーション映画協会(ASIFA)公認で、国内最大規模の映画祭。世界四大アニメーション映画祭の一つともされる(他にアヌシー〈フランス〉、ザグレブ〈クロアチア〉、オタワ〈カナダ〉)。

最近は2年に一度、8月に5日間にわたって開催される。
プログラムで最大の目玉はコンペティション。
例えば今年、第16回では実に60作品がノミネートされ、4日間に渡って上映される。

そう、僕が初めて参加した時のこと。

会場のアステールプラザで一番大きなホールに、恐らくはその日いちばん多い観客が流れ込んでくる。
他の会場のプログラムはすべて終了しているうえに、多分会場の外に遊びに出かけていたアニメーション作家たちも戻ってきている。

そんな多くの観客に囲まれながらの鑑賞――。2日間だけだったと記憶しているけど、連打のごとく上映される作品、作品がさっぱり「わからない」のだ。

恐ろしいのが短編だということ。
わからないまま、次々と作品が重ねられていき、プログラムを観終わるころにはすっかり疲労困憊していた。

この場合「わかる」とはどのような状態をさすのだろう。

作品に込められたメッセージが読み取れることだろうか?――いや、それなら言いたいことを紙に書いて、壁に貼っておいたほうが早い。

悪戦苦闘した結果、至ったひとつの結論が「作品=人間」ということ。
アニメーションを観ることは、人づきあいそのものだ。

初対面の相手について、まず僕たちはどのように反応し行動するだろう。人間そのものは、テーマでもメッセージではない。
見た目だけでわかることもあるけど、わからないことの方が遥かに多い。
向こうから話しかけてきてくれて、すぐに打ち解けるかもしれない。

また、一向に向こうがしゃべりかけてくれないので、何とかこちらから歩み寄り――時間が経つとすっかり意気投合するかもしれない。
いや、そもそも見た目が嫌で、話しかける気にもなれないかもしれない。

あと重要なのが、一目惚れ、という現象。
何もわからない相手に対して、なぜ、こんなに好きと思えるのか、興味をもてるのか。
作品に向かい合うことは、自分に向かい合うこととも同じだ。

2000年に始まった『WAT 世界のアニメーションシアター』。

僕は、今回の『WAT2016』が初めての体験なのだけど、その入り込みやすいセレクションに驚嘆した。
人間でいうところの、人当たりの良さ。

制作された監督も、日本、アメリカ、ブラジル、フランス、オランダ、イタリア、デンマーク、イスラエル出身と国籍はさまざまながら、その垣根は驚くほど低い。

向こうから流暢に、寡黙に、話しかけてきてくれる。
しかし、その奥は深い。

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©Tiny Inventions

時間にはうるさい、けど自らは動けない。時計が「想い」を持った時、世界はまた新たな一面をみせる。『ビトイーン・タイムス』

地球の自然なリズムと一体となった生活は、あまりにも豊か。『ちいさな芽』

見えないものを見せないことで見えるようになる。『Otto ― オットー』

家と職場の往復。鬱屈した思いはブラジル――地球の反対側とも軽々とつながる。『ギーダ』

ひとつ屋根の下に暮らす夫婦のすれ違いを、重なりを、ここまで鮮やかに視覚化した作品があっただろうか。『真逆のふたり』

言葉を交わさない愛の会話は、ロマンティックでエロティック。時には思いもかけない物語をも生む。『触感のダンス』

非日常の場、出会いと別れのを繰り返し。やはりお遍路さんと重ねてしまう。僕は行ったことはないけれど。『サンティアゴ巡礼』

人と人を隔てる境界線が実体化する。その姿はあまりにも不気味だ。『ホワイトテープ』
敵対するはずの相手と踏む華麗なステップ。お互いの関係性があまりにも深い、皮肉なことに。『ブラックテープ』

戦闘が日常の世界。治安部隊と警察と、テロリスト。ねじれた関係性をアニメーションが明確に浮かび挙がらせる。『アフガニスタン ― 戦場の友情』

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©TinDrum Animation-The Animation Workshop

『WAT2016』の作品群は大きく「愛」と「社会的視点」の2つのプログラムに分けられる。

混迷を極めているこの世の中において、この2つの言葉はますます重要性を増している。
シンプルに、そして深く。この世界と、自分自身に向かい合える作品が『WAT2016』には集まってきている。

さて、僕はといえば、広島国際アニメーションフェスティバルで「わからないと悩むこと」は、参加を重ねるごとに少なくなってきている。
僕が寛容になってきたからか、年をとったせいか「わからない」のだけれど。

漫画 「私の気になる2作品」(赤松かおり)

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最後までお読みいただきありがとうございました。
次回ご紹介する映画は未定です。

赤松 かおり

赤松 かおり

本とお散歩と食べることが大好きなイラストレーターです。webやフリーペーパーなどで、イラストを描いております。

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