かきくけコラム :「ブックブック こんにちは」40


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毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。

「陽文庫-アキラブンコ」のみずいけさんと、ブックカフェ・トキシラズの山本さんがかわりばんこにつづる、本にまつわるコラム「ブックブック こんにちは」、38回目はトキシラズ山本さんです。

40のブック

『不揃いの木を組む』小川三夫 聞き書き・塩野米松 文春文庫

『不揃いの木を組む』
発売日: 2012/3/9
著者: 小川三夫 聞き書き・塩野米松
出版社: 文春文庫
ページ数: 255ページ
ISBN: 978-4167801786

 

法隆寺といえば、修学旅行の定番で、「世界最古の木造建築」ということをなんとなく暗記して「ははぁー、千年以上も立っているなんてすごいなー」と単純に感心してしまいますが、放っておいても立っているというような簡単なものでは無く、宮大工が入り、悪くなった部分を変えたり、また木材を継ぎ足したりしながら長い時間、建立時の姿をとどめているのです。建てた大工がいて、それを直す大工がいる、またそれを直す大工がいて、、というように現代までの伝言ゲームがうまく言った結果、法隆寺は今も立っているというわけです。

そんな法隆寺の宮大工・西岡常一の弟子、小川三夫さんが今回紹介する本『不揃いの木を組む』の語り手です。小川さんは宮大工としての腕を磨き、独立して、鵤工舎(いかるがこうしゃ)を設立。多くの歴史的建造物の修復を手がけ、また、寺社仏閣を建ててきました。その中でつちかった、弟子を育てる、人を大きくする、そのためにはどうすればいいのか?ということを語り下ろしたが本書のテーマです。

まえがきに、“お茶を飲みながら、酒を酌み交わしながら自分のことや弟子の育成のこと、、、思いつくままに感想や体験を述べました。”とあります。さらっと書かれていますが、

酒を飲みながら、思いつくまま、語る。

というのは、皆様ご存知の通り、こんなに不正確になること請け合いな状態はない。当然本書にもお酒のマジックが遺憾なく発揮されていて、「俺は弟子に教えない」と言っていたのに、後になって「俺は結構教えてると思う」と言い出したり。教育者ではないと言った後、「最近の学校教育は、、」と語り始めたり。同じような話なんども出てきたり。決して綺麗にまとまった本ではありません。

しかしながら小川さんの凄いところは、多少の矛盾があっても大きく主張が変わるわけではない、というところです。編集の段階で矛盾するところはカットすることもできたはずなのに、聞き手の塩野さんはそれをしなかった。矛盾するものも飲み込みながらも最終的に芯を外さないというところが宮大工・小川三夫の真骨頂であると考えたからではないかと思います。

タイトルの「不揃いの木を組む」というのは、寺社の柱や梁(はり)に由来しています。現在なら、製材屋さんに注文すれば、ミリ単位で正確な木材が届きます。しかし、そんな技術が無かった時代は大工の経験とカンで木の状態を見て、木を組んでいく。そうして建てられたものは、年月が経っても、安定した状態を長く保つことができる。

小川さんは人も同じだと言います。一つのチームのなかに色々な人物がいる。技術もバラバラだから、お互いに助け合う。その中で心が育ち、相手のことを考え、何を必要としているかがわかるようになる。そうならなければ大きな建物は作れない。

不揃いの木とは、木材であり、チームの一人一人であり、また、個人の中にある想いなのです。

文:山本岳史(トキシラズ)
ブログ ブックカフェ・トキシラズ

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公開日 : 2019-8-14
最新更新日 : 2019-8-12