陽がゆく。 話を聞き、文字に起こす「まちの記憶を綴る『聞き書きスト』講座」


Web上にはいろんな文章が溢れていますが、どうやって記事が構成されたか、どんな手順が踏まれてその記事が出来上がったのかを意識しながら、文章を読んでみても面白いかもしれません。
SNSなどでも文章を書く機会が多い今、「文章を書く」もしくは「文章を読む」ということを意識するキッカケにもなれば幸いです。

まちの記憶を綴る『聞き書きスト』講座とは

聞き書きの世界では著名な塩野米松さんを講師に招き、話し手の生活や考え方、お仕事の話などを聞き、歩んでこられた人生が浮かび上がるような文章にまとめていくチカラを養う講座です。

「協働のまちづくり」のコーディネートなどを行っているNPO法人スローソサエティが主催した事業で、姫路では初開催。

「陽がゆく。」


「ブックブックこんにちは」や「陽文庫」でお馴染みの 水池 陽(みずいけ あきら)さんに、独自のきりくちでお店や人を紹介していただく連載コーナーです。

ブックブックこんにちは(てくてくひめじ内 かきくけコラム)
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陽がゆく。

まちの記憶を綴る『聞き書きスト』講座

11月4日姫路文学館

「聞き書き」とは

耳慣れない言葉なので、「聞き書き」ってなんやねん!?と思う方も多いと思いますが、一人の「話し手」に対して一人の「聞き手」が話を聞き、それを文章にまとめることをいうそうです。

塩野米松さんとは?

全国各地を旅しながら、漁師や職人さんなどに話を聞き、それを「聞き書き」として、本にまとめられ、失われゆく伝統文化・技術の記録に精力的に取り組まれている。
著作には『木のいのち木のこころ 天/地』西岡常一・小川三夫(聞書き
)『木に学べ』西岡常一(聞き書き)などがある。

講師の塩野さんいわく、インタビューを文章に起こすときには
○話し手の言葉だけ「」で表す。
○聞き手の質問もそのまま使う
○喋ったのをそのまま使う
という3通りのやり方があるらしく、普段何も考えずに読んでいると、どれに当てはまっているのか特に気に留めることもなく読み進めてしまいます。聞き書きとは3番目の手法で、話し手が話しているかのような文章で文をまとめていく手法のことをいうそうです。

まず午前中は具体的な聞き書きの進め方、やり方を塩野さんに教えて頂きました。
11時頃からは話し手として、城の西にゆかりある3名のご年輩方に来て頂き、グループワークとして3班に別れ、受講者が話し手に質問し、そのやり取りを実際にレコーダーに録音しました。

午後からはテープ起こし!
これがツライというかなんというか…
好きで得意…という方も中にはいらっしゃるかもしれませんが、僕はたぶん何回やってもちょっと好きにはなれない作業だなと思いました。
テープ起こしというのは想像以上に大変!とチラホラ聞いていたのですが、理由がわかりました。
人それぞれ大変だと思う理由は異なるかと思いますが、僕はまず一字一句、ちゃんと話し手が言ったことを正確に起こす、というのが辛かった。
たぶん通常は人の話しを聞いていても「印象に残ったところだけ覚えていたら良い」とか「要点をまとめる」という思考が働くかと思うのですが、この一字一句文字を起こす作業にはそのどちらもがない!
というよりは「自分」というものは要らなくて、話し手の言葉を正確に伝えることが目的なので、方言や言い回しを勝手に変えてはいけない(最初は。段階を経ると、読みやすくするために発言に主語を差し込んだりするのですが、この日においてはそれはまた後の作業になるので)。

このテープを起こして文字を打ち込む作業が一番辛かったです。
僕は10分間の話し手の話を起こすのに、おそらく一時間半くらいかかっていたように思います。
一時間のインタビューを聞いて正確に文字に起こそうと思ったら、一体どれくらい時間がかかるのだろう…と思ってしまいました。

「聞き書き」の手順

手順としては以下の通り
①インタビューを録音する
②テープ起こし
③整理
④読める文章にする
⑤小見出しをつける
⑥間違いがないか、これで良いのか話し手にも確認して発表

という手順になるようです。

ちなみに塩野さんは聞いた話の1%程度しか、最終的に作品には残っていないとのこと。
もちろん作品としては不要な箇所や、内容が被っていることなどもあるようなのですが、いい話だなと思っていても、カットせざるを得ないときがたくさんあるそうです。

塩野さんからは話を聞くときのコツや留意点についても教えて頂きました。

コツ

○仕事の話を中心に聞く
(人生論はあまり意味がないので、とりあえずちょっと無視しておく)
➡︎仕事の話をよくよく聞いたら、そこから人生観などが浮かび上がってくる。

○雰囲気が堅いときは、自分のことも話してみる。

留意点 態度

○相手に興味をもつ

○相手を尊敬しないとダメ

○一生懸命に聞く➡︎自分の話をわかってもらいたいと話し手は思うようになる
○相槌が一番大切!

○質問しないと出てこない情報
(体型、身長、眼鏡の有無、格好など)がある。
○名前などは最初に聞いておく

○聞きたいテーマは持たない方がいい
➡︎テーマを持ってインタビューをすると誘導尋問のようになってしまう

○文章で答えてもらえるような質問をする➡︎「はい」「いいえ」で答えられるような質問はしない

○話し手は自分では自分のことをあまり褒められない

○相手は芸能人でもタレントでもない素人
➡︎良い言葉を引き出そうとしてもなかなか出てこない

○写真を撮ったらお終いになるようなこともあるが、なるべく言葉で説明してもらうようにする。

○絵描きの人のように、自分で絵の具を足したりはできない。
➡︎文才はいらず、「そのまま」使うが原則。

受講者の「本が出来る、またはそろそろインタビューを終えてもいいなと思えるタイミングはどのようなときですか?」
という質問に塩野さんが
「自分と話し手が重なったとき」と仰られていたのが心に残りました。
話し手を背負って、自分が話し手の言葉を代弁できると思えたときがインタビューの終わり時だと。
深いなぁと思いましたが、なんと塩野さんは最長13年にわたって、一人の人をインタビューしたことがあるとのこと。
「でも最後まで心を許してくれなかった人が2人程いました。2人とも京都の人でした(笑)」という話も印象的でした。

元々「聞き書き」の手法を始められたのも、「相手の方が話が面白く、話の幅も広い。相手が海だとしたら、自分はおちょこだ」と思ったときに、相手がそのまま話しているような「聞き書き」という手法を選ばれたようです。

感想

普段はfacebookなどの投稿においても書き言葉で構成されている文章が多いですが、話し言葉で構成されている作品を見ると、文章の上手い下手は関係なく、話し手の話し方、表現、方言、言葉のつなぎ方にその人となりが滲み出ていて、なんともいえない味わいがあります。

出来上がった文章には聞き手の意見は入っていませんが、話し手に成り代わって表現できた!という達成感が味わえる気がします。

話し手さんとの共同作業というか、良き伴走者になるというか。

陽文庫は資質としては「聞き書き」には全く向いていないと思いますが、午前中に聞いた話を自分で書き起こしたものを読んだとき、じわ〜んとしたものを感じました。

加工されていない話し手の雰囲気や人柄が本当にそのまま出ているなぁと。

陽文庫らしさや個性的な表現はほとんどないですが、話し手の良さを引き出せるお手伝いが出来たようで、少し嬉しかったです。

講座はもうしばらく続きます。

2回目は城の西地域で長年活躍されている職人さんやお店などを訪ねて、聞き取りを実施します。

最後の3回目は来年2月〜3月に塩野さんがまた来姫され、そこで2回目に聞き書きした内容を報告するという会。

なかなか書き起こしは手強い作業ですが、固くなりそうな頭皮をモミモミしながら、引き続き頑張ろうと思います。

おわり

文責:水池陽(陽文庫)
補足・編集:OTETEお手伝い

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公開日 : 2017-11-15
最新更新日 : 2017-11-15