かきくけコラム :「イマハ、ドコデスカ?」17

imaha

毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。

「懐かしい未来」をキーワードに、豊かな暮らしや生き方を模索する、いまいみきさんのコラムです。

第17回目「耳をすませば・・・①」

林田のお山を訪ねてから、今に至るまでを振り返りながら、文章を綴っています。

わたしが、なぜこの場所に惹かれたのか。それは、ここに住む人たちに妙な懐かしい気持ちを覚えたからです。遠く懐かしい「ラダック」のような暮らしをしている人を思い出すような、お山でのていねいな暮らし・・・お山にはどんな声が聞こえてくるのでしょうか。

「こどもたちの手に暮らしをとり戻そう」

「こどもたちの手に暮らしをとり戻そう」こう聞かせてくれたのは、この林田のお山で暮らす「てんさん」。彼女は、このお山で「山と畑のまるごとえん」という野外保育スタイルのようちえんを営みながら、パートナーのまるさんや家族と賑やかに暮らしています。彼女は、いつもお山でこどもたちと山や畑を駆けまわっています。子どもたちより日焼けして、子どもたちよりも体力があって、なんとも逞しい・・・!

以前は神戸で保育士として働いていたようですが、教育の在りかたや暮らしの在りかたを模索し、ご縁でこのお山と出逢い、いまはこの山のなかで保育をしながら、一歩踏み込んだ「暮らしの提案」を実践されています。

自然保育とか、野外保育ときくと、「森のようちえん」を連想される方も多いかもしれません。自由にのびのびと・・・すばらしいように聞こえますが、てんさんは、自由の教育ではなく、「自由への教育」の生き方を提案しているような印象をうけます。

一見自由ってきくと、なにをしてもOKと思いがちですが、お山には危険な箇所や、虫や生き物との共存のなかで守ってほしいルールがあるので、それらを守ったうえで、お山のこどもたちは、自然を大切に敬う暮らしを日々学んでいます。

「見守る」って本当に難しいのです。だけど、彼女は子どもたち本来の姿を見守りながらひとりひとりと向き合い、こどもたちの気持ちに寄り添って過ごしています。そして、家族と対話をすることも大切に、人間味あふれる姿で時にはきびしく、でもあたたかく包んでくれる真のやさしさで、オトナであるわたしにも同じように接してくれるてんさん。いつも何気ない気遣いで心和ませてくれることで、わたしは彼女に心を開いていくのでした。

魔法のことば

彼女は、いちからつくりだす魔法をもっています。例えば、畑で育てた恵みのイチゴをいちど凍らせて、瓶のなかでつぶしたイチゴと豆乳をまぜて蓋をして振ってイチゴシェイクをつくったり!休耕田になった畑に大豆のタネを蒔いて大豆を育て、田んぼでとれたお米で米糀をつくったものと一緒にお味噌を仕込んだり!お山から粘土質の土を採取してきて、藝術作品をつくったり!「なかったらつくろう!」と言いながら、ていねいに手仕事を楽しむ姿は、まるでこどものよう!みていてワクワクします。

普段生活をしていると、なかなか時間に追われ、効率の良さを考えてしまいがちですが、自分の手でつくりだすことや、その可能性と喜びを共有することは、いまの時代だからこそ、とても貴重だと感じます。いろんなオトナが率先して学び楽しむ姿を、こどもたちにみてもらい一緒に時間を共にできることはとても大切だと、彼女はいいます。わたしは、ここに通うようになって、畑や田んぼ、山のなかで生きものとともに暮らし、わたしたちは地球の一部としていきていることを、彼女の生き方をとおして日々学んでいます。

もともとわたしは自然が好きだけど、彼女のやさしさに触れ、彼女を慕い、そして訪れるうち、このお山のことが好きになりました。そして現在、わたしと同様ここを訪れるうちに、一歩踏み込んで自然の大切さを実感しながら皆で守り育て、次の世代につないでいこう!そういう考えをもった人たちが、この山に増えてきて、その人たちとの関わりも面白いです。よかったら、てんさんの声に耳をすましにお山にきてくださいね。

最後に・・・彼女がごはんを食べる前にこどもたちと言う魔法の言葉を紹介します。

「ごはんをつくってくれたおかあちゃん、ありがとう。おひさま・おほしさま・おつきさま、ありがとう。火の神さん、水の神さん、山の神さん、ありがとう。いっしょに食べてくれるみんな、ありがとう。ではでは、いただきます。」

この声が山に響くとき、わたしはいつも感謝の心に包まれるのです。

文責:いまいみき
かつらぎ自然のまなび舎
HP:https://katsuragi-manabiya.jimdo.com/
ブログ:http://ameblo.jp/katuragimanabiya/

あさのは商店

あさのは商店

姫路生まれ・姫路そだち。姫路→大阪→徳島→姫路。
肌の弱い自分が必要なものを近くで買えるとうれしいなーと、肌にやさしい日用品「あさのは商店」をしています。
趣味は、ウクレレ・縫い物・言葉の観察など。

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