毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。

「陽文庫-アキラブンコ」のみずいけさんと、ブックカフェ・トキシラズの山本さんがかわりばんこにつづる、本にまつわるコラム「ブックブック こんにちは」、32回目は陽文庫みずいけさんです。
32のブック
「友だちリクエストの返事が来ない午後」小田嶋隆
発売: 2015/4/28
著者: 小田嶋隆
出版社: 太田出版
サイズ: 四六判
ページ数: 252ページ
ISBN: 978-4778314453
コラムニストの小田嶋隆さんによる、サイゾーに連載されていたものをまとめた、一見かくも悲しいタイトルがついている本です。友だちを増やさなければならないという脅迫に苦しみ、他人という地獄に苦しむ人に向けて、その対処法を伝える指南書(どちらかというと男性向け)。
小田嶋さんは言います。
「友だちと自分の間にも、適切な距離を確保した方がいい。というよりも、まずはじめに、自分自身との距離の取り方を学ぶべきなのかもしれない。」
(p.3)
そして一般的な大人の男を例にあげ、次のようにも言います。
「大人の男には話し相手がいないのである。嫁さんが話を聞いてくれない男は、行きつけのスナックにでも行かないといよいよ整理がつかない。ママを口説こうとしているわけではない。ツマミが旨いとか、店の内装が気に入っているというのでもない。でも毎日顔を出さないと落ちつかない。で、幾分酔っ払って、本日の営業日報みたいな話をくどくどと語って長い困難な一日を終えるわけだ。」
(p.51)
僕にもスナックではないですが、特に話を聞くのがうまいわけでもなく、愛想がいいわけでもない、細かい営業日報的な話を聞き出そうとしてくれるわけでもないけどよく行く店があります。たぶん自分の生存確認みたいなもんなんだろうなぁと。
毎回何を伝えるでもなく、伝わっている感じも全くしませんが(そもそも何を伝えたいかもわからないですが)、とりあえず姿、形を晒す。通年落葉しているような、いつまでも咲くことのない自分をマイルストーンのように店に置いていくという…
僕の場合、その姿・形を晒す相手は人の機微に敏感な人格者では駄目で、やや話をズレて捉える傾向があり、人間の機微には「鈍」な人の方が心地よい。なぜならあまり心情を察する能力が高い人だと、自分のことが悟られそうでなんだか辛くなりそうな感じがするので。
そんなことを考えていると、二ヶ月に一度か三〜四ヶ月に一度行く、こちらは飲食店ではないが、行けば20分〜30分立ち話をするという店を思い出しました。ここはきめ細かな毎日の営業日報ではなく、四半期ごとの総括…といった感じかもしれません。
毎回、何をしに立ち寄っているのか自分でもわからないけど、時々ふらりと立ち寄る。どちらかというと後者の店の方が聞き上手だが、その場合はなんだかわからないけど、こちらが話し下手になってしまい、うまく伝えることができなかったりする。
結局、前者でも後者でもディスコミュニケーション(あくまで僕の視点からの)は起きてしまっているのですが、身勝手なマイルストーン(もはや線路の置石かもしれない)だけは置いていくという。
日々、それでなんとなく、パッとしない自分をやりくりしているのかもしれないなぁと。
友だちは子供のためのものだ
成熟とは友達が要らなくなること
(p.87)
と言う小田嶋さん。
その瞬間瞬間は繋がることができても、結局、最後は自分一人なのかもと思います。相手を異性に置き換えても、セックスしたから誰かとひとつになれるというわけではないなぁとほのぼの思う、秋晴れの午後なのでした。
おわり
文:みずいけあきら(陽文庫)
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