かきくけコラム :「ブックブック こんにちは」34


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毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。

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「陽文庫-アキラブンコ」のみずいけさんと、ブックカフェ・トキシラズの山本さんがかわりばんこにつづる、本にまつわるコラム「ブックブック こんにちは」、34回目は陽文庫みずいけさんです。

34のブック

「食べる私」平松洋子

発売: 2016/4/20
著者: 平松洋子
出版社: 文藝春秋
サイズ: B6版
ページ数: 379ページ
ISBN: 978-4163904450

【ご飯を食べる→お腹いっぱい食べる→お腹いっぱいになってからもさらに食べる。】

これが、昔一人暮らしをして痩せていたとき以外、生まれてこのかたずっと丁寧に小太りを続けてきた僕の食生活のスタイルです。

この本では、平松洋子さんが「対話」形式で、ギャル曽根さんやデーブ・スペクターさんなどの調子が軽そうな人から、吉田秀彦さんや高橋尚子さんなどの肉食系っぽい人、土井善晴さんや小泉武夫さんなどの食にきちんと向かい合っていそうな人まで、多種多様な話し手さんの「食べる」話を収録しています。

どの人の話も面白いのは、誰にとっても食べるという行為は自分の中で固有のものがあり、どんなに無機質そうな人でも、どんなものをどんな風に食べてきたかという話を聞くと、その人の家庭や生活の匂いがしてくるからだと思います。

以前「人前でご飯が食べれなかった」という女性の話を聞いたことがありますが、人としての素直な欲求を生々しく人前でさらけ出す「食べる」という行為の奥深さが本書を読み進めていくとよくわかります。

印象に残ったは、コラムニストのジェーン・スーさんの言葉です。

食べ物と自意識ってやっぱりくっついているじゃないですか。“予約”とか“隠れ家”とか、自意識をくっつけるのが嫌なんだと思います
(p.171)

食をテコに使うのが好きじゃないというか。音楽もそうですね。自意識の映し鏡みたいに物を使うのがあんまり好きじゃないのかもしれないですね
(p.173)

ファッションで食の嗜好を決めたり、映画を見たり、音楽を聞いたり…
ライフスタイルを他人からの見映えでついつい決めがちなのを戒めるような言葉だな、と。

というか平松洋子さんの聞き手としての力量がスゴイ。
食に対して元々そこまで熱量がない人に対しても、会話(質問)をするたびに内容が掘り下げられていき、その人の普段の生活や物事に対する考え方まで浮かび上がってくるような聞き方をしています。

美味しいものを美味しく食べたい。
美味しいものを楽しく食べたい。
美味しいものをみんなで食べたい。
美味しいものをいっぱい食べたい!

誰も傷つけることのない素直な欲求に基づく言葉がこの本の中には溢れていて、何にも食べてなくても、読んでいるとちょっと幸せな気分になれます。

美味しいものを食べれば幸せ、それも大勢で食べれば尚のこと…なはずですが、くだらんことを思い出しました。

昔、既に別れていた元彼女とたまたま同席した飲み会の席で、元彼女に「オレのものはオレのもの。オマエのものはオレのもの。そんで、オマエはオレのもの。」と僕が言ったときに、「ぶっ殺す」みたいな殺意に近い眼差しで僕のことを見ていたことを。
一度お別れした女性にはジョークというのが通じないんだな…と。

コラムも性懲りもなくまた一年続けようと思っていますので、引き続き宜しくお願い致します。

おわり

文:みずいけあきら(陽文庫)
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公開日 : 2019-1-9
最新更新日 : 2019-1-9