毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
「陽文庫-アキラブンコ」のみずいけさんと、ブックカフェ・トキシラズの山本さんがかわりばんこにつづる、本にまつわるコラム「ブックブック こんにちは」、36回目は陽文庫みずいけさんです。
36のブック
「街を変える小さな店」堀部篤史
発売: 2013/11/18
著者: 堀部篤史
出版社: 京阪神Lマガジン
サイズ: B6版
ページ数: 224ページ
ISBN: 978-4874354278
今回ご紹介する本は「街を変える小さな店 ―京都のはしっこ、個人店に学ぶこれからの商いのかたち。―」です。京都にある本屋、恵文社一乗寺店の店長の堀部篤史さんが「街の本屋が生き延びるヒントを探ってみたい」と、京都にある理解されることすら拒むパンクな店、やる気なく後ろ向きな店など、様々な店の声を収録しています。
京都の喫茶店六曜社さん、レンタサイクル屋さんのえむじかさん、居酒屋さんの屯風さんなど、いろんなお店のお話が出てきますが、特に僕が好きなのは喫茶「迷子」のオーナー山本さんのお話。
過去にすばらしい商品や作品が完成しているのに、なぜそれらのまがいものの再生産を、騙されたふりで消費し続けなければならないのか。
(p.105)
極端な話、車であればトヨタも日産も根本的には大きく違わないはず。
なのに、妄信の体でそれらのよさやら違いやらをアピールするなんて、できたもんじゃないですよ。
自分は人一倍客観性が強いから、営業も自らの売り込みもむいてない。
(p.107)
こう語る山本さんは、“こんなことぐらいならできるかもしれない”と、コーヒーのみのメニューと、ちょっとしたアンティークを売るという形態のお店を構えます。自分は客観性が強いと山本さんも言っていますが、自意識は僕も非常に強いのでお金を頂くときにはいろいろ考えてしまいます。
自分の本に関する活動でいうと、
1. 本を自分でセレクトして、お店の雰囲気も良くなるように。そのお店のお客さん(もしくは店主さん)が喜ぶような本棚を作る、という仕事。
2. 単純にお客さんがほしい本を用意する(最たるものはワンピースの新刊を置くとか、週刊誌を売るとかそういうことになるのかなと)。
3. 注文機能 お客さんがほしいと思っている本をどうにかして探す。
簡単に言うと以上の3点に本の仕事は集約される気がします。本を並べるときは、あれこれ考えを巡らせて本を選びますが、基本は買い取って売るだけ。要は右から左に商品を流しているだけで、その本の編集に関わったわけでもないし、印刷をしたわけでもない。
時々「こんな本買わせて頂きました!ありがとうございます!」と言われることがありますが、確かにその人と出会わせた場所にその本を置いたのは僕ですが、それ以上は何もしていない…と、嬉しいけれど何だか決まりが悪い心持ちになったりします。(じゃあお前は何してんねん!という話ですが。)
このあたりはお菓子を作ったり雑貨を作ったりなど、目に見える成果物を作っている人達とはちょっと感覚が違うかなぁと。
「小さな店」
最後の方で堀部さんは、ガケ書房の山下さんとの対談で『「小さな店」っていうのは、個人の思惑が届く範囲の個人店、という意味』と語っておられます。
ドラスティックに変わる必要は必ずしもないとは思いますが、人の意識が変わらないと、国道沿いなどにある、人の好みの最大公約数的なものを想定したようなチェーン店ばかりになってしまうのではと。なんとなくですが、個性的な店が減れば個性的な人も減っていってしまう気がします。
個人の特性やこだわりが生かされた面白いお店も生き残れるように。そして、個人の生まれ持った心の持ち様や気質をなるべく潰さないような街や社会になれば良いなと思います。
こんな店があっていいんだというのは、こんな人がいてもいいんだということに繋がる気がします。
街の本屋さんが生き残るには…という視点で本書は構成されていますが、他業種のいろんなお店の話が出てきていて、消費の仕方、消費経済のあり方、何に関して金銭を頂くのかということについても考えさせられます。
「買い物は投票」と最近よく耳にします。僕自身の消費欲もなくなってきて久しいですが、個人の思いが発露したような店がもっと増えたら(その人達が食べていける形で)いいなと思っているので、読んでいて最後まで為にもなり、楽しめる本でございました。
おわり
文:みずいけあきら(陽文庫)
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