かきくけコラム :「おばあちゃんZの言葉」01


grandmaZ

毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。

かきくけコラム:https://tekuteku-himeji.com/archives/3748

姫路の言葉が好きな、あさのは商店店主の篠原玲子さんによる「おばあちゃんZの言葉」、お楽しみください!

会話データを見直してみる

私は学生時代に姫路の言葉の研究をしていました。

私は、祖母とのほぼ自然な会話を約6時間録音し、文字化して分析しました。言葉の研究が楽しかったのはもちろんですが、祖母と話す時間もすごく貴重でした。人情時代劇や喜劇のような話がつぎつぎ出てきておもしろいのです。

学校を卒業して研究をやめたあとも、ずっと、このデータがもったいないと思っていました。そこで、このコラムで、11年前に録音した会話の文字化データを見直して、言葉や、言葉以外の気づいたことを書いていくことにしました。

どうぞ、お付き合いください。

おばあちゃんZ

祖母は昭和2年生まれ、録音当時は77歳で、米寿の今も生きています。イニシャルは「Z」。ここからは祖母を「Z」と呼びます。「R」は孫の私です。

タイトルの横の絵は、絵描きだったZの夫の弟(どちらも故人)が、若い頃のZを描いた「Z夫人」です。ずいぶん美しいように見えますが、私が知っている限りでは、年相応の普通のばあさんです。

Zのこと

1927(昭和2)年、揖保郡網干町(1946年姫路に編入)生まれ。
1948年に姫路に嫁ぎ、現在も姫路の市街地に居住。子3人、孫7人。
数年前に夫が亡くなり、ひとり暮らし。
趣味は広告や新聞の絵を切ってはがきに貼ること。

Rのこと

1980(昭和55)年、姫路生まれ、姫路育ち。
進学・就職のため大阪・徳島に住んだあと、2011年に姫路の実家に戻る。
「あさのは商店」店主。
両親と3人暮らし。趣味はウクレレ。

Zの言葉01

Z : ほいで、もひとりの子は、何しよってんゆーてゆーたらな、あの、ほら、あのー動物園のな、動物園のえさやりするん。

R : 飼育係?

Z : ほんなら獣医になるんがええなーゆーたら、獣医はなりたくないんやと。えさやるんが好きやと。ほんなら、あんた、それもええやんかー、ゆーて。

R : いろんな人があるな。

Z : いろいろあるな思て、わろた。昔みたいに、がっこ(学校)出て、花嫁修業して、結婚するんが夢とちゃうやんか、皆。せないかんことないもん。結婚するゆーんが。お茶やお花覚えてへんし。なんでもええんや。

<2004年5月に収録・読みやすいように加工>

何しよってん ゆーて ゆーたらな

これは、Zの知り合いの孫がいま何をしているか、という話の一部です。私が研究していたのは「何しよってん」の部分です。「何しよん」が「何しよってん」になると尊敬語です。この「何しよってん」は、いま話題になっている「知り合いの孫」に対する尊敬語ですが、Z自身より年下の人物にも使うということ、その人が聞いていなくても使うということ、それはどういう意識によるものか、標準語的な敬語とはどのように違うかなどということを、ごちゃごちゃと考えていました。私にとってはアツいテーマでした。

そう言えば、「ゆーて」も、研究テーマになるのではないかと考えたことを思い出しました。「ゆーて」は引用を表す助詞「と」に当たります。周りの人の言葉を注意深く聞くと、例えば「ええ天気やなー ゆーて ゆーた」「ええ天気やなー おもて おもた」のように、「言った」ことには「ゆーて」、「思った」ことには「おもて」と、引用の助詞を使い分けていることがあるのです。もしかして大発見?!と興奮しましたが、それ以上の展開が思いつかず、研究するのはやめました。

花嫁修業して、結婚するんが夢とちゃうやんか

さて、知り合いのお孫さんが動物園の飼育係をしているという話題は、Zの結婚観へと広がっていきます。現在88歳のZは、サラリーマンとは結婚したくなかった、専業主婦は嫌やった、と、商売の家に嫁ぎ、70代まで仕事をしていました。その時代の人にしては新しい考え方の持ち主であるようで、このときも「なんでもええんや」と言っています。

このとき私は20代前半で、その後、就職して姫路を離れました。そのころには、たまに会うたびに、「ええ人はおらへんのか」「ラブレターもらわへんのか」「おばあちゃんは、あんたの年には子どもが3人おった」などと言うようになりました。進歩的なZはどこに行ったのか。私はZに会うのが面倒になりました。

私は、数年前に会社を辞めて姫路に戻り、今はたびたびZを訪ねてマシンガントークを聞いています。好きなことをしている独身の私に、Zは、「今はそういう生き方もある」「楽しいにしとったらええんや」「友だちは大事にせなあかん」と、なぐさめの言葉をかけてきます。あきらめてないのに。勝手なものです。

文:篠原玲子(あさのは商店)
http://www.asanoha.net/

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公開日 : 2015-11-18
最新更新日 : 2015-11-18

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