かきくけコラム :「くらしとしごと」vol.7


毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。

かきくけコラム

みんなの「かきくけコラム」

毎月第3週目のコラム「くらしとしごと」。書いてくださるのは、神河町長谷でコワーキングスペースkajiyanoを運営する山口なおさんです。

第7回 くらしとしごと 「人生を賭けて、実験中。」(振付家・ダンサー 京極歌織さん)

毎月第2土曜日にコワーキングスペースkajiyanoで開催中の「くらしとしごと」のイベントレポートと次回の予定内容について書き綴っていきます。

今回のゲストは、振付家・ダンサーとして活躍する京極歌織(アーチスト名:伊東歌織)さんです。地域おこし協力隊として2017年11月神河町へ移住。今年の9月からはなんと同じ地区でご近所さんに。

「いったい何者?」「ダンサーって普段どんなことを考えているの?」歌織さんのルーツや考えていることなどをお聞きしました。

歌織さんとの出会い

地域おこし協力隊で神河町に来られて間もなく、kajiyanoに歌織さんが立ち寄られたのが出会いでした。

あくまで軸はアーティスト。協力隊に就任する段階から、卒業後を見据えて「今何をするべきか」を意識して動いているのが印象的でした。

ダンサーという職業。特にコンテンポラリーダンサーをされている方とじかに出会うことはなかなか無く、衝撃を受けました。

自分の中に何か接点はないだろうかと思い起こせば、学生時代、いろんな音楽を聴き漁っていた頃、阿部薫や灰野敬二、ジョンケージなどの実験的な即興音楽に触れ、その流れで大野一雄やピナバウシュの映像を見たことがありました。緊張感と期待感、静けさがあり、リアルで夢のような感覚はどちらにも共通しているように思いました。私もジャンルは違いますが、ここでの暮らしは実験とも言えるものだと思っています。

以後、定期的にkajiyanoに通ってくれるようになり、色んな話をするようになりました。違う世界で勝負をしている人ですが、共通の話題もたくさんあり、いつも刺激をもらっています。

アーティストとしてのこれまでの活動

歌織さんは1980年千葉市生まれ。小6のとき、近所で開催されていた地元の劇団のミュージカルレッスンに参加したことがその後の人生のきっかけに。

高校時代にはダンス部で創作に取り組み、全国高校ダンスフェスティバル等に出場。自分たちで考えて形にしたものが評価されることの面白さに目覚め、ダンスの道を志すように。

高校卒業後は、アルバイトをしながらダンスレッスンに通う生活。30歳を前にしてようやく、ダンスでお金を得られるようになったそうです。

2011年の東日本大震災を機に、振付家として本格的に活動を開始。また働き方について見直し始めるきっかけにも・・・。

2015年からは劇団「東京デスロック」に所属。地方公演での体感的な気づきから移住に興味を持ち、のちに出雲で「地域おこし協力隊」を卒業したダンサーさんとの出会いから移住への思いが強くなったそうです。

2016年にはダンスコンペティションで奨励賞を受賞。活動に弾みがつくかと思いきや、エネルギーを出しきったような状態になり、逆に立ち止まって考える時間も増えたそうです。

神河町に来てからの活動

そんな中、恩師を通じて兵庫県神河町の健康プログラム『ハート体操』創作のオファーが。撮影で訪れた際に、そのロケーションや雰囲気が気に入り、町が「地域おこし協力隊」を募集していることも知りました。

その後、完成お披露目イベントでの町民や役場職員さんたちとの交流を経て、本格的に移住を検討するように。現在のパートナー朋彦さんとの結婚を経て、翌年の2017年秋ついに移住、隊員としての生活がスタートしました。

配属は健康福祉課。「健康づくり」「体操」という切り口で、各集落の高齢者によるグループを訪問。

「今までのような前衛的なダンスはできないかも・・・」という覚悟はしていたものの、やはり別世界。最初は、コミュニケーションの取り方から大いに悩まれたようです。

フリーランス時代は、舞台1回1回が勝負。プレッシャーも大きい。

一方で、地域おこし協力隊の仕事は、何回も顔を合わせて継続的に関係を深めていきながら形にしていく作業。だんだんと住民との距離が近づき、歌織さんの認知も広がっていきました。

歌織さんの地域との関わりを象徴するエピソードがあります。

「ダンスをやりたいんだけど、指導してもらえない?」
町内の女性シニアグループからの相談。前衛のダンスではなくて、いわゆる「ダンス」(笑)。そして、やりたい曲は・・・「ヤングマン」(笑)。ここで断らず、やってみるのが歌織さんのすごいところ。

サビの「Y・M・C・A」の部分はさすがに触れなかったそうですが、振り付けを考案。
「せっかくだからみんなに見てもらおう!」と神河の道の駅のイベントで披露。(スクリーンで映像を見せてもらいましたが、堂々のパフォーマンスでした!)さらに、町外に進出して加東市のイベントにも出演。

そこからの流れで今度は、「村のオリジナル音頭を作ろう!」という声が!公民館に集まり、歌織さんがファシリテーターとなって集落の良いところをディスカッション。出た意見やアイデアを盛り込んで歌詞が完成しました。

するとさらに、「歌ができたんだから、踊りを作ろう」。地区に伝わる盆踊りをベースに、代表的な地域シンボルの写真から出てくるイメージを動きにアレンジして、踊りも無事完成。

他にも、町内の幼稚園や高校でのワークショップなど、着実に活動の場を広げておられ、歌織さんの認知も広がっていきました。今では野菜もたくさんもらえるようになったそうです。

京極夫婦の話

4つ年下ご主人の朋彦さんも、同じくコンテンポラリーダンサー。近年は、演出家として海外の公演を手掛けるなど文字どおり全国、海外を飛び回っています。

プレイヤー同士でもあり作家同士でもある、二人の関係。なにかと相談し合うそうですが、衝突も多いというのが我が家にも重なります(笑)。この日のスタイリッシュな発表用のパワーポイント資料は、前日に朋彦さんがほとんど作られたそうで、日頃から歌織さんをいろんな形で支えている姿が浮かんできました。

これからの夢

ラスト1年の目標の一つは、地区の踊りまでいっしょに作り上げたシニアの人たちの、本格的な舞台デビュー。どんな化学反応が起こるのかが楽しみだといいます。

そして歌織さん自身のビジョンもあります。

そもそもの移住の大きなきっかけは、「暮らしが変わると、体や心、ダンスがどう変わるか」の実験。

ダンサーの寿命は長くはありません。舞台演出や振り付けなど仕事の幅を広げていくためにも、新しい“日常”によって、心身にどんな変化が起こってくるのか・・・

歌織さんの実験は続きます。

伊東歌織Official Site https://ito-kaori.net/

●次回のお知らせ #11●

12/14(土) ゲストと内容は交渉中です。お楽しみに!

くらしと、しごと。それぞれがどう関わり合い、人生の豊かさにつながっていくのか。ちょっと立ち止まって考えてみるひとときになれば幸いです。

文:山口なお
  @kajiyano
  @kajiyano/谷間の家さんきら
  https://kajiyano.ch/

公開日 : 2019-11-20
最新更新日 : 2019-11-20