毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
「陽文庫-アキラブンコ」のみずいけさんと、ブックカフェ・トキシラズの山本さんがかわりばんこにつづる、本にまつわるコラム「ブックブック こんにちは」、23回目はトキシラズ山本さんです。
寒い、寒い
寒い、寒い、本当に寒い。日本は氷河期に入ってしまって、このまま春なんて来ないんじゃないかというような天気です。そんなひと時、みなさんいかがお過ごしでしょうか?トキシラズ山本です。
こんな寒い日には暖かな山小屋に引っ込んで、ロッキングチェアーに揺られて本を読み、揺らめく暖炉の炎に美しい過ぎ去りし日を映し出したりする以外にすることないんじゃないかと思うのですが、私には山小屋もロッキングチェアーも暖炉も振り返るほどの歴史もないので、今日も本を読んでます。
23のブック
『牝虎』ニコライ・バイコフ
この寒さにちなんで、極寒の狩人たちが活躍する『牝虎(めとら)』をご紹介します。作者はニコライ・バイコフ、訳は上脇進さん。
『牝虎』
発売日: 1990年2月
著者: ニコライ・バイコフ 作・上脇進 訳
出版社: 中公文庫
ページ数: 278ページ
ISBN: 4122016851
舞台は東満州。自由と狩りを愛し、徹底的に男尊女卑なバボーシンは雪をかき分け鹿や虎を狩る凄腕の狩人。そんなバボーシンも認める狩人ゾートフは謎の美女ナスターシャと山小屋で暮らし始める。気に入らないバボーシン、そんなのお構いなしのゾートフ、心配そうな愛犬・ズメイカ。
とそこに、ナスターシャを金持ちに売り渡したいチェマコフ一家の魔の手が忍び寄る。果たしてどうなってしまうのか、と見せかけて、あっさり撃退されるチェマコフ一家。一件落着と思いきや、今度は虎に襲われ瀕死になるゾートフ、しかし、細腕のナスターシャが自らの髪をロープ代わりに、雪道を担いで連れ帰り一命を取り留める。それを目の当たりにしたバボーシン「こいつはただの女じゃねぇ!」と気になり始めてしまう。三人の関係はいかに!
過酷な雪山暮しと、圧倒的な大自然、スリリングな狩り、微妙な人間関係がミックスされた面白い小説です。ロシア人の名前は覚えにくいかもしれませんが、頭に入ってくるとその独特の発音が癖になって、苦手意識がある人も読んでみれば以外といけるかも。これを読んで寒さに強くなるわけではないですが、夏に読むよりなんとなく気分が出ます。なので、この寒さがなくならない今がチャンスです。ではでは。
文:山本岳史(トキシラズ)
ブログ ブックカフェ・トキシラズ