不定期で、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
小さなころから本好きで、常に本を持ち歩く子供だったという播磨出身のイラストレーター、赤松かおりさんによる、大人になってからこそ読みたい子供の本、「大人にも響く子どもの本」はじまりますー。
第50の発見:日々の暮らしのなかにある楽しみを見つけたい人へ:『ちいさなトガリネズミ』(2022)
12月は何気ない日常が愛おしくなる本をご紹介します。
<あらすじ>
ちいさなトガリネズミは古いアパートに一人暮らし。きっちりと起き、ご飯を食べ、
お弁当を持って仕事(空港の両替所)の出かけ、決まった時間に帰ります。
<心に響く言葉>
ふたりが いなくなると、
いえのなかは とたんに しんみりと しました。
トガリネズミは ねむくなって、
めを こすりました。
「うん、いいとしだった」
こうして、いちねんが おわっていきました。―『ちいさなトガリネズミ』p63、みやこしあきこ・作 2022、偕成社
働き者のトガリネズミが主人公で、職場に電車で行って、帰りにパンを買うのが楽しみというルーティンが描かれ、
ルービックキューブが揃って嬉しかった、年末に友達が訪ねてきて、みんなで歌っていい年だった、で終わりです。
トガリネズミの淡々とした静かな日常に触れると特別なことが起きなくても『ああ、このままでいいんだ』と思うことができて、
心のザワザワがなくなっていくのがわかります。
トガリネズミのきょとんとした表情もとても可愛らしく、
オイルヒーターや黒電話、ブラウン管テレビ、古いラジオなど、
室内のインテリアや街角なども、外国のような風景で、その場所で暮らしているような気持ちになります。
毎日を粛々と歩んでいくことで、自分の幸せは自分で作ることができる。
日々の暮らしの中にある楽しみや、あたたかな気持ちを見つけることができる絵本です。
文責:赤松かおり
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