毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
かきくけコラム:https://tekuteku-himeji.com/archives/3748
4人目のコラムニストは、姫路出身のお坊さん・なわたっせんさんです。お楽しみください。
01の想起「シウマイ」
東京在住ひめじん坊主
姫路生まれ姫路育ち、いわゆる生粋の「ひめじん」のお坊さんです。
宗派は、親鸞聖人を宗祖とする浄土真宗の大谷派(東本願寺)です。
今はワケあって、東京で仏教の研究をする仕事をしています。
もしかすると「仏教の研究」と聞いても、ピンと来ない方が多いかもしれません。
この件については、おいおいご紹介を。
普段は東京で生活をしているので、じつのところ二ヶ月に一度ほどしか実家のお寺には帰っていません。しかし、身は東京にあっても、魂(ソウル)はいつでも「ひめじん」だと自負しています。
そんな〝東京在住ひめじん坊主〟な私が、今立っている場所から「故郷」を想うコラムを書き始めることにしました。
裏ソウルフード
じつは、姫路を「故郷」だと思うようになったのは、東京へ移り住んでからです。
とは言っても、姫路以外の土地に住んだのは初めてではありません。大学の四年間は大阪に住み、そのあと京都でも九年間生活をしました。しかし、姫路をむしょうに「なつかしい」と感じだしたのは、明らかに関西圏を離れ、新幹線で帰省するようになってからです。
そんな私が、それを見れば不思議と「故郷」が想起されるという食べ物があります。
そのような食べ物を巷では「ソウルフード」と呼びますが、私にとって、姫路のことが想い出される一番のソウルフード、それは…
崎陽軒のシウマイです。
もしかすると、姫路界隈ではあまり知られていないかも知れません。私自身も東京に住むまでは、見たことがあっても特に意識したことはありませんでした。何をかくそう「横浜名物」ですから。
このような、ご当地ものではないのになぜか「故郷」が想起されるような食べ物を、ここでは仮に「裏ソウルフード」と名づけておきます。
さて、この崎陽軒のシウマイの魅力と言えば、とにかく「ちょうど良い」のです。多すぎず少なすぎず、値段もお手頃。味付けも濃すぎず薄すぎず、なおかつソウルフードの重要な条件とも言うべき「優しい味」がします。また、冷たいままでも十分美味しく、「これをレンジで温めて食べた日には、私は一体どうなってしまうんだろう」などと想像をふくらませながら食べるのもオツです。
不思議なことに、駅でどのシウマイを買おうかと悩んでいる時や、買ってすぐの時点では、まだ「故郷」は想起されません。座席に着き、新幹線が発車して、そろそろ食べようかと、ひょうちゃんのキャップに手をかけた瞬間、「ああ、私は今、姫路に向かっているのだ」と、姫路のことがむしょうになつかしく想い出されるのです。
「故郷」とは何か
思うに「故郷」とは、ある一定の地点にとどまるものではありません。どれほど離れ、忘れていようとも、ふとした瞬間、心の奥底に呼び覚まされるもの、それを「故郷」と名づけることができるのではないか。いつの頃からか、そう感じるようになりました。
これからしばらくの間、さまざまな「故郷」的なものをめぐり、仏教の話も交えながらつらつらと書かせていただこうと思います。とりあえず、次回は「表」のソウルフードにまつわる話を。合掌
文責:なわたっせん
勤務先 親鸞仏教センター
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