毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
「陽文庫-アキラブンコ」のみずいけさんと、ブックカフェ・トキシラズの山本さんがかわりばんこにつづる、本にまつわるコラム「ブックブック こんにちは」、72回目はトキシラズ山本さんです。
72のブック
『camera people』 monogram PIE BOOKS
『camera people』
発売日 : 2006/12
著者 : monogram
出版社 : PIE BOOKS
ページ数 : 126ページ
ISBN-13 : 9784894445703
今更いうまでもないですが、スマホも含めると、写真を撮る人が増えました。店を始めた十年ほど前であれば、店内を撮っている人がいれば、ちょっと珍しくて「何にするんですか?」と聞いていました。
大抵は趣味で撮っているか、ブログ用にという返答が返ってきていましたが、いつの頃からか「別に何ってわけでもなく」という返答が返ってくるようになりました。当時は何のことやらわかりませんでしたが、今なら何となく撮らない方が珍しいくらいの感覚になりました。
私が写真に興味を持ったのは15年ほど前。中古のフィルムカメラを買って、たいした勉強をするでなくパシャパシャ撮ったのが最初です。
そうすると、まぁなんてことない写真が大量にプリントされていきます。これではいかん自分は天才じゃなかった!と入門書を買い、シャッタースピードやら被写界深度やら三分割構図やらを覚えて、またパシャパシャ。若干マシながら別に面白くもない写真ができていきます。
これは沽券に関わると色々な写真の本を読むと、今度は自意識過剰な、引いてみるとはずい感じの写真ができました。ここまできてプロの写真を見て思うのです。「プロ、まじすげー」。
ご紹介する本は、100人のセミプロ・アマの写真家が、ひとり一枚の作品を持ち寄って構成された写真集です。旅先の一枚や家族との一コマ、日常の変わった風景などが並びます。ただ、発行年が2006年と少し古いので、デジタルカメラの画素数が少なくデジタルの作品は質感がざらざらしていますし、トイカメラが流行していた時期で、当時の雑誌で取り上げられていた作例そのままみたいな作品も多数あります。
全体的になんだかちょっと古びている感じがするのですが、明るく前向きなエネルギーも感じます。おそらくこの100人の中に、難しい理論を覚えたり、写真を生業にして辛くても頑張っていこうという人はいないかも知れません。
しかし、彼らは、レンズを向けてシャッターを押すというシンプルな行動で自分を表現する、このカメラというものに夢中で、自分の切り取った1枚の写真に大きな自信を持っていたと思うのです。この「どうだー!いいだろー!」と言いたげなスタンスに、微笑ましさと、うらやましさ、あと少しの気恥ずかしさを感じて、作品の中に引き込まれていくのです。
文:山本岳史(トキシラズ)
ブログ ブックカフェ・トキシラズ