かきくけコラム :「ブックブック こんにちは」42

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毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。

「陽文庫-アキラブンコ」のみずいけさんと、ブックカフェ・トキシラズの山本さんがかわりばんこにつづる、本にまつわるコラム「ブックブック こんにちは」、42回目はトキシラズ山本さんです。

42のブック

『講談入門』神田松之丞 河出書房新社

『講談入門』
発売日: 2018/8/1
著者: 神田松之丞
出版社: 河出書房新社
ページ数: 278ページ
ISBN: 978-4-309-27958-9

近ごろ何が面白いかっていうと、落語が面白いです。もういま落語に夢中です。iPodの中身はどんどん落語になっていく、YouTubeを開くとオススメ落語動画が並んでいます。もうそろそろ話し方も江戸弁になってきて「するってーと、オメーさん何かい?」なんて言い出しそうだし、このコラムの書き出しも、「えー、近頃なんですな、非常に心持ちがいい、何をしてもいい天気で、買わなきゃないけど何を食べても美味しいし」なんて始まりになりそうです。

なんでこんなことになっちゃったのかと言うと、ある打ち合わせの席で、主催者の方が「トキシラズ、神田松之丞めっちゃ面白いで」とおっしゃったことが発端です。なんで急に言ったんだろう?と怪訝な思いではありましたが、律儀なもんで、帰って神田松之丞のラジオを聞いてみたところ、これが面白い。(ラジオの内容は、ほとんど人の悪口を言っているだけでしたが)滑らかで、毒のある喋りに夢中になりました。

でも、神田松之丞は、ご存知ない方もいらっしゃるかもしれませんが、落語家じゃないんです。講談師なんです。講釈師とも言います。「講釈師、見てきたように嘘を言い」の講釈師です。

宮本武蔵や大石内蔵助など実在の人物をモデルにしたお話を、朗々と語るのが講釈師。落語は、ほとんどが完全なフィクション。に比べて、講談はノンフィクションと言われています。(とは言っても話の中で宮本武蔵が空を飛んだり、精霊的なものが出てきたりしているので、ちょっと抵抗ありますが)その講談界で百年に一人の逸材!未来の人間国宝!と言われているのが神田松之丞です。

本書『講談入門』は、一章で講談とはどんなものかと言う基本的なこと。二章で実際の講談のネタの解説。三章に人間国宝・一龍斎貞水さんと神田松之丞の対談。四章は神田松之丞へのインタビューとなっています。特にネタ解説のあらすじは、読むだけでも面白そう、講談入門の名にふさわしい内容になっています。が、すごくいいんですが、なんと言うか、神田松之丞への、ヨイショ感がすごい!

まず、内容のほとんどは語り下ろしです。話を聞いて、長井好弘さんという方が文章に起こしているんですが、文章の所々に

“さすが大物、最初のネタでもう、松乃丞は天狗になっていたのである。”p109.12
“恐るべき、そして頼もしい力業である。”p165.9

など、誉め殺しが入る。そして随所に散りばめられた、神田松之丞のグラビア写真(なんとカバー裏まで!)本当に、講談界の期待を一身に背負っていると言いますか、愛されてるな~。としみじみ感じる内容になっています。どうぞお手にとってその愛されぶりを確かめてみてください。

そうそう、講談師のファンになったのに、なんで落語聞いてるのかと言うと、講談は本当に書籍も音源も少ないんです。だからつい手軽な落語に目がいってしまったんですが、紙面が尽きてしまいましたので、この続きはまたいずれ。

文:山本岳史(トキシラズ)
ブログ ブックカフェ・トキシラズ

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姫路生まれ・姫路そだち。姫路→大阪→徳島→姫路。
肌の弱い自分が必要なものを近くで買えるとうれしいなーと、肌にやさしい日用品「あさのは商店」をしています。
趣味は、ウクレレ・縫い物・言葉の観察など。

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