毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
「陽文庫-アキラブンコ」のみずいけさんと、ブックカフェ・トキシラズの山本さんがかわりばんこにつづる、本にまつわるコラム「ブックブック こんにちは」、26回目は陽文庫みずいけさんです。
遅くなってすみません
さらっと一週間締切に遅れてしまいました。とはいえ誰からも突っ込まれずに、また性懲りもなくこのコラムを書いています。
このコラムを読む方はどちらかというと女性が多そうな気もし、食べものや暮らしにはとても興味を持ってそうでなので、スポーツはどうだろう…
今回紹介する本はサッカーの本。サッカーのワールドカップが近づいているからかどうかは…あまり関係ないかも。
26のブック
「サッカー移民 -王国から来た伝道師たち」加部 究
発売: 2003/11
著者: 加部 究
出版社: 双葉社
サイズ: –
ページ数: 301ページ
ISBN: 4575296023
サッカーの日本代表はW杯に出る度にブラジルからの帰化選手の力を借りてきました。
1998年フランスW杯 呂比須ワグナー
2002年日韓W杯 三都主アレサンドロ
2006年ドイツW杯 三都主アレサンドロ
2010年 南アフリカW杯 田中マルクス闘莉王
(2014年と今回のロシアW杯は日本サッカーが成長したからか、帰化選手の登録はなさそうです。)
などなど。
マニアックな話になりますが、この本は今までのブラジル人選手(主に日系の)、彼らの生い立ちから日本に渡るまで、そして日本に渡ってからのサッカー人生について書かれています。
登場する人物で、読者の方がギリギリわかるのはセルジオ越後(現在はサッカー解説者)や、南アフリカワールドカップに出た闘莉王(現京都パープルサンガ)くらいでしょうか。あとはキングオブトーキョーと言われたFC東京のアマラオ、魔術師と呼ばれたジョージ小林、チグリーニョ(小さな虎)といわれた与那城ジョージなどなど、旧いサッカーファンの人だけが心くすぐられる名前が並びます。
サッカーの話だけでなく
僕がこの本をいいなぁと思うのは、サッカーの技術やテクニック、有名選手の自伝などではないので、読んでいると、日本とブラジル両国の文化的社会的背景が自然とわかるという点。
ブラジルの人は一般的におおらかなのか、発言も直情的でハッキリとしていて(セルジオ越後さんは解説を聞いていてもそんな感じ)、日本のチーム構造や社会に対してもストレートに物を言うところが面白いなぁと。
ハッキリとし過ぎていて、嫌味がないですし。(来日するときの日本側と交わした条項の中には「文句を言わない」というのもあったらしい。)
闘莉王選手などはまだ現役ですが、Jリーグが始まる前の日本サッカー黎明期を下支えした人達の姿が思い浮かびます。
外国選手が日本に助っ人に来る時代から、日本人選手が海外に出て、助っ人として活躍するシーンも今では多く見られるようになりました。Jリーグが始まった1993年からは格段に日本サッカーのレベルが上がったと思います。その日本サッカーのレベルアップに、遠く地球の反対側に住んでいたブラジルの選手が寄与したことは間違いないと思います。
まだまだ今のJリーグでも外国籍選手に占めるブラジル人選手の割合は高く、今後もブラジルにゆかりのある選手の活躍が楽しみです。
著者は加部究さん。今もサッカーライターとして、一線で活躍されています。加部究さんの息子さんは未蘭といいます。おそらく、あのイタリアのチームから取った名前だと思われます。
ほんとにサッカー狂だなぁと思いますが、装丁も素晴らしいこの本(この本の装丁ほんとに好きです)、現在は姫路城内図書館の書庫に眠ってしまってますが、良かったら手にとってみてください。
おわり
文:みずいけあきら(陽文庫)
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