毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
小さなころから本好きで、常に本を持ち歩く子供だったという姫路在住のイラストレーター、赤松かおりさんによる、大人になってからこそ読みたい子供の本、「大人にも響く子どもの本」はじまりますー。
第4の発見 心の余裕が欲しい人へ:『風にのってきたメアリー・ポピンズ』1934
<あらすじ>
銀行員の厳格なバンクス氏の一家には、4人の子どもがいます。
しかし生真面目なバンクス氏は仕事と時間に追われて、心の余裕を失っていました。
そんなとき、魔法使いの世話役メアリー・ポピンズがこうもり傘につかまって空から舞い降りてきます。
そして薬をアイスクリームやジュースの味に変えたり、絵のなかに飛び込んで入ったり、子どもたちと、疲れた大人たちを現実とつながった楽しい魔法で慰めます。
梅雨のある6月ということで、今月は傘をもったキャラクター、映画でも有名な『メアリー・ポピンズ』に出てくる言葉をご紹介します。
読むと、毎日が面白くなるポイントを探してみようと思えてきて、励まされます。
<心に響く言葉>
メアリー・ポピンズは、見さげはてたというように、フンと鼻をならしました。
「知らないんですか?」とあわれむようにいいました。
「だれだって、じぶんだけのおとぎの国があるんですよ!」『風にのってきたメアリー・ポピンズ』(P.L.トラヴァーズ作、林容吉訳、岩波書店 1934) - (p.44)
これはメアリー・ポピンズが休日に、魔法で絵の中に入りお茶を楽しんで帰宅したときのセリフです。
今を生きる私たちも、日々、仕事などでプレッシャーを強く受けたりすると、不安や焦りで心の余裕を失ってしまいます。
しかし魔法は使えなくても、アニメ、漫画、ゲーム、映画、音楽、写真、アイドル、ファッション、観劇、登山、マラソン・・・など、没頭できたり、癒されたりする「じぶんだけのおとぎの国」を持っていれば、日々の幸福感はぐっと高まります。
どのジャンルでも、ただただ「好き」なことに没頭できる時間があるからこそ、
気づかないうちに心に抱え込んでしまったものを解放して、明日への一歩が踏み出せます。
介護の現場でも、お年寄りが、演歌歌手のファンになったことがきっかけで、お化粧やインターネットを勉強し、積極的になっていったという事例がたくさんあるそうです。
リハビリをする時にも、「足を動かせるようになりましょう」ではなく、「また登山できるようになりましょう」というほうが、やる気につながるそうです。(※)
一見「何の役にも立たない」と思えることでも、生きがいになります。
他の人にはなくて良くても、自分には心の支えとして必要なものがあります。
深まらなくても形にならなくても、自分がそれをしていいんだと受け入れられたら、他の人がやっていることにも共感できます。
みんなとは違っていても、自分だけのよりどころを持っていれば、
大変な社会や現実にいても、それが生きる力になるよと励ましてくれる一冊です。
(※)参考記事:藤谷千明「趣味に生きる人のための老人ホームって作れますか?―バンギャル老人ホームへの道(1)」tayorini by LIFULL介護https://kaigo.homes.co.jp/
文責:赤松かおり
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