毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
小さなころから本好きで、常に本を持ち歩く子供だったという姫路在住のイラストレーター、赤松かおりさんによる、大人になってからこそ読みたい子供の本、「大人にも響く子どもの本」はじまりますー。
第23の発見 大人になりたくない人へ:『ピーターパンとウェンディ』1911
1月にご紹介するのは、ディズニーアニメでも有名なピーターパンのお話です。
<あらすじ>
ネバーランドに住む永遠に成長しない子ども、ピーターパンと妖精ティンカーベルは、
ウェンディが住むロンドンのダーリング家に忍び込み、犬のナナに影を食いちぎられてしまいます。
ウェンディが影を縫い付けてくれたお礼に、ピーターパンは彼女をネバーランドに招待し、
妖精、海賊、人魚たちのいる世界へ冒険に出かけます。
<心に響く言葉>
「ぼくは大人になんか、けっしてなりたかない。」 ピーターは、はげしい調子で言いました。 「いつも子どもでいて、たのしく遊びたいんだ。だから、ぼく、ケンジントン公園へにげてって、 ずっとながいあいだ、妖精たちの仲間と住んでたんだ。」
――― P60『ピーター・パンとウェンディ』J・M・バリー作、石井桃子訳 福音館書店、1911
ピーターパンのように、いつまでも無邪気で子どもらしさを失わないことは理想的なこととされます。
ですが、ピーターパンは純粋すぎるゆえに、自分の楽しみのために残酷なことや、人の心を傷つけるようなことも平気でしてしまいます。
自分の楽しみのために海賊のフック船長の自尊心を傷つけ、結果ウェンディやティンカーベルを危険な目に合わせてしまいます。
純粋すぎて他人の気持ちがわからず、ティンカーベルの前でウェンディばかりひいきして、嫉妬心を気づかうことができません。
それを目の当たりにして、ウェンディはだんだん「純粋さ」に疑問をもちはじめ、物語の最初で 「大人になりたくない」と嘆いていた彼女は、最後には「もう大人になってもいい」と受け入れます。
現代の私たちも、子ども時代には未熟すぎて相手を傷つけることをしてしまったり、 されたりした心あたりがある人もいるのではないでしょうか。そういう苦い経験を経て、 大人になって人に優しくしたり、気遣いができるようになることもあると思います。
「年をとることイコール悪いこと」とされがちですが、この物語を読むと(体力的なことを除いて) 大人になることは必ずしもネガティブなことではないように思えてきます。
文責:赤松かおり
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