毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
小さなころから本好きで、常に本を持ち歩く子供だったという姫路在住のイラストレーター、赤松かおりさんによる、大人になってからこそ読みたい子供の本、「大人にも響く子どもの本」はじまりますー。
第5の発見 ダメダメでも愛される力が欲しい人へ:『アラジンと魔法のランプ』8世紀頃?
<あらすじ>
アラジンの父親は貧しいけれど、働き者の仕立て屋でした。
しかし、息子のアラジンは大の怠け者。父親は、息子のことが心配なあまり、病気になって亡くなってしまいました。それでもアラジンは遊び呆けていました。
そんな彼の前に叔父と名乗る魔法使いが現れます。
アラジンは魔法使いに宝があるとそそのかされて、ランプを取りに行きますが、喧嘩別れし、それと知らずに魔法のランプを手に入れます。
帰宅したあと、母親が売るために磨こうとして汚いランプをこすると、なんとランプの魔人があらわれ、なんでも願いを叶えてくれるといいます。(回数制限もなし)アラジンは働く必要がなくなりました。
ある日、王女様に一目ぼれしたアラジンは、母親に宮殿へ「王女様が嫁に欲しい」と伝えに行ってもらいます。
魔人に億万長者にしてもらって、許婚の大臣の息子との結婚を妨害し、ついに王女様と結婚。
再びあらわれた魔法使いにランプを奪われるも、無事奪還し、末永く幸せに暮らしました。
ディズニーのアニメや実写映画では、アラジンは貧しいけれど心が清い青年です。
しかし原作を読んでみると、アラジンは何をやっても仕事が長つづきしない、怠けもの。
金品につられるし、王女様に一目ぼれしたきっかけが、浴場で扉の影に隠れてのぞき見したから・・・まるで『ドラえもん』にでてくるのび太のようなキャラでした。
すぐ母親や魔人に頼ってピンチを切り抜け、ラストで反省して真面目になることもありません。
こうしてみると、アラジンは努力せず、巨万の富と王女様を手に入れたように思えます。なんとうらやましい・・・。
どうしようもないダメ人間なのに世界一幸せな身分となった勝因は何なのでしょうか。
<心に響く言葉>
あくる朝。母親はもう一度出直しました。けれどもやっぱり、王様の前でなんにも言えず、空しく宮殿からさがりました。
今度こそ。と勇気をふるい、また次の朝も出かけましたが、どうしてもダメ。
そんなわけで、母親はまいにち宮殿へ通い続けまして、もう七日目。王様は、不思議に思われました。『アラジンと魔法のランプ』絵・文 馬場のぼる こぐま社 1994 p.20
何かをやろうというときに、一番必要なのは、自分を信じることですが、
現代に生きる私たちも、初めてのことや、無理かもしれないと思うことをするときには、不安や心配を感じます。
アラジンの母親は、内心叶うとは思ってなかったけれど、息子の「王女様を嫁にもらいたい」という願いを伝えようとひたすら宮殿に何度も足を運びました。
大人になると責任を感じてなかなか簡単には「大丈夫」と言ってあげられないので、
「それは厳しいと思うよ」とばかり言ってしまいがちだけれど、
自分だけでは自分を信じるのが難しいとき、親に限らず、誰か無責任な立場からでも「いけるんじゃない?」って応援してくれる人がそばにいることは大人にとって、必要だと思います。
何かをする前には、どうしても「うまくいきそうか」で判断してしまいがちです。
確かに勝算は大切ですが、最初から「どうせダメだから、やってもムダだ」と、行動をはじめること自体をあきらめてしまうことも多いと思います。
しかし無謀に見えても、結果がどうなるかはやってみなければわかりません。
他力本願で周りに甘えて、頼りまくりなアラジンは問題ですが、とにかく彼はやってみることを選択しました。
それが、たとえダメ人間でもアラジンが周りに愛され助けられて、結果幸せになった秘訣なのではないかと思います。
頼み下手な人や、何かをやってみようというときに、愛され助けられる力が欲しいあなたに、一度読んでみてほしい物語です。
※青空文庫で無料で菊池寛訳が読めます。
https://www.aozora.gr.jp/cards/000083/files/43122_16871.html
文責:赤松かおり
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