毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
「陽文庫-アキラブンコ」のみずいけさんと、Books&cafe トキシラズの山本さんがかわりばんこにつづる、本にまつわるコラム「ブックブック こんにちは」、57回目は陽文庫みずいけさんです。
57のブック
「生きるとは、自分の物語をつくること」小川洋子・河合隼雄 新潮文庫
発売: 2011/2/28
著者: 小川洋子・河合隼雄
出版社: 新潮社
サイズ: 文庫
ページ数: 151ページ
ISBN: 978-4101215266
小説家の小川洋子さんと精神科医の河合隼雄さんとの対談集です。
『人は、生きていくうえで難しい現実をどうやって受け入れていくかということに直面した時に、それをありのままの形では到底うけいれがたいので、自分の心の形に合うように、その人なりに現実を物語化して記憶にしていくという作業を、必ずやっていると思うんです。』p47
小川洋子
生まれてからしばらくは親の元で生活し、年頃になれば最寄りの小学校に行き、特別なことがなければ学力に応じた近所の高校にいく。
そのあと個人の考えや家庭環境によって、進学か就職かに別れていくが、そのあとの大きな分岐点は、結婚や出産、またはどの地域に住んで暮らしていくかということくらいしか大まかには決められない。
本当は一人一人、環境も、持っているキャラクターも違うので、こうすればこうなるというものはないと思う。その中で何かにつまずき失敗し、後悔するような事態に直面したときに、人はどうやってその局面を乗り越えていくのだろうか。親しい人が亡くなった、自分に不測の事態が起こった…身近な人に話しても、自分の悲しみや苦しさの深度は必ずしも他人とは分かち合えないと思う。
いわゆる「普通の」「通りいっぺんの」物語から外れた時に、人は何を指針にし、何を拠り所として生きていくのか。
自分が今まで生きてきたことを、他人と比べてああでもない、こうでもないと比べずに、ただただ全てを『自分の物語』として捉え直してみること。自分の人生を自分なりにその都度編集して、自分の物語を作るということが大事なのかもしれない。
河合さんは亡くなられたが、河合さんの死後に書かれた小川さんによる“長い”あとがきがまた良い。
街で何気なく歩いているあの人もこの人もそれぞれに「自分の物語を生きている」と考えると、見える世界が少し変わる気がする。
文庫で気軽に手に取れる本なので、ぜひ一読してみてください。
自分の生き方を補完してくれるような一冊です。
おわり
文:みずいけあきら(陽文庫)
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