毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
小さなころから本好きで、常に本を持ち歩く子供だったという姫路在住のイラストレーター、赤松かおりさんによる、大人になってからこそ読みたい子供の本、「大人にも響く子どもの本」はじまりますー。
第33の発見 人の話をうのみにしちゃう人へ:『二番目の悪者』2014
2021年ももう終わりですが、12月はわが身を振り返って考えたい絵本をご紹介します。
<あらすじ>
あるところに金のライオンがいました。動物の王様選びが行われますが、銀のライオンが候補にあがります。
その人気を恐れた金のライオンは、ありもしない銀のライオンの悪いうわさを流します。
最初は信じなかった他の動物たちも、次第に信じるようになり、うわさはどんどん大きくなっていきます。
<心に響く言葉>
「僕はただ、銀のライオンに気をつけてってきいたから仲間に教えただけだよ」
「私だって、なんとなく心配だったから、家族に知らせただけだわ」
「おいらだってちょっと気になって、メールを転送しただけさ」
金のライオンの他には、悪意のある者など、誰一人としていなかった。――― P51『二番目の悪者』林木林 作、庄野ナホコ 絵、小さい書房、2014
本当は、自分の目で確かめないとわからないのに、人のうわさを簡単に信じて、別の人にも良かれと思って
伝えてしまうこと。自分自身にも思い当たることがないとはいえません。
SNSにもみられるように、根拠のはっきりしない情報をRTしたりシェアしたりして拡散するのも、
ほとんどは悪気はなく善意からされているのだろうと思えば、
タイトルの「二番目の悪者」とは実は無自覚にやっている自分たちのことなのかも・・・
と強烈な皮肉がメッセージとして伝わります。
短いけれど、何度も読んで自分に問いかけたくなるような、大人がよみたい絵本です。
文責:赤松かおり
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