かきくけコラム :「大人にも響く子どもの本 」21


毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。

小さなころから本好きで、常に本を持ち歩く子供だったという姫路在住のイラストレーター、赤松かおりさんによる、大人になってからこそ読みたい子供の本、「大人にも響く子どもの本」はじまりますー。

第21の発見 周りに理解されないものに熱中している人へ:『あたまにつまった石ころが』2002

11月にご紹介するのは、アメリカの実話にもとづくお話です。

<あらすじ>
作者の父は、子供の頃石を集めるのが好きでした。
石と関係ある仕事につきたいと思っていたけれど、「石ころじゃあ、金にならんぞ。」と言われて
ガソリン・スタンドをはじめます。

経営は順調でしたが、店の奥にはちゃんと集めた石をおく棚を作りました。
大恐慌がおこり、店をたたみ、狭い家に引っ越しても屋根裏部屋に石をおくための棚を作って眺めていました。
日雇い仕事をしながら、仕事がないときは科学博物館に通い、石をかざったガラスケースの部屋で
1日中すごしました。

ある日、博物館の館長に話しかけられたことをきっかけに、
石への熱意を見込まれて夜の管理人として雇ってもらえることに。
石を磨くうちにラベルの間違いを発見するようになり、やがて鉱物学部長に任命。
館長のはからいで働きながら大学に通い、ついには科学博物館の館長にまでなりました。

<心に響く言葉>

ジョンソンさんは、ほほえんでいいました。
「わたし、理事会で話してみたんですよ。
あなたのように石にくわしい人が専門家として必要だってね。
そして、とうとうわかってもらえたのよ」
「大学にもいっていないのに?」
「わたしはね、こういったのよ。ここに必要なのは、
あたまのなかとポケットが石でいっぱいの人だって。あなたみたいにね」
「ああ、わたしならそうかもしれません」

―――p26『あたまにつまった石ころが』文/キャロル・オーティス・ハースト 絵/ジェイムズ・スティーブンソン 光村教育図書 2002

子どものころから大好きな石集めをしていた作者の父親のお話です。

「お金にならないよ」と理解されなくても、環境が悪くなっても、自分の好きなことをやり続ける。

他の人にとっては大変なことでも、やっている本人は楽しいことをしているだけなので、やめないように努力しなくても自然にやってしまいます。

少し前までは存在しなかった「ユーチューバー」などの職業が認知されてきている現代だからこそ、このお父さんの生き方は、
周りに理解されなくても、熱中しているものがある人の心に響くのではないかと思います。

最後の「父ほど幸福な人生を送った人を、わたしは知りません」という一文も心に残りました。


文責:赤松かおり
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赤松 かおり

赤松 かおり

本とお散歩と食べることが大好きなイラストレーターです。webやフリーペーパーなどで、イラストを描いております。

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