毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
「陽文庫-アキラブンコ」のみずいけさんと、ブックカフェ・トキシラズの山本さんがかわりばんこにつづる、本にまつわるコラム「ブックブック こんにちは」、48回目は陽文庫みずいけさんです。
48のブック
「自由な学校を出て思う事は?〜元デモクラティックスクール生にインタビューしてみた。〜」佐々木桃子・児島げんき
発売: 2020年
著者: 佐々木桃子・児島げんき
出版社: 自費出版
サイズ: 四六判
ページ数: 325ページ
ISBN: -
神崎郡市川町にある『デモクラティックスクールまっくろくろすけ』の元スクール生にインタビューし、著者2人の意見や感想などを交えながら、“デモクラティックスクール”に通っていた人達の学校を出たあとのことをまとめた本です。
デモクラティックスクールとは何か?
本書によると
【デモクラティックスクールもフリースクールの一種ではあるが、一般の“学校”に戻るための不登校支援とは関係はなく、“学校”に戻るための訓練をする場所ではない。デモクラティックスクールは、“学校”と違う教育理念を持ち、独立している。】
とのこと。
長くなりますが、以下はデモクラティックスクールの教育理念です。
(1)自分の好きなことを学ぶ
【子供たちは自分で学び、成長することができると信頼されています。だからそれぞれが興味のあることをしています。子どもたちは「やりたいことをやる」ことで、その時々の最大限の学びを得ています。】(2)カリキュラム&テストなし
【どんな形でも子どもたちがテストなどで評価されたり、大人からアクティビティについて先に提案されたりすることはありません。子どもたちは自分で自分のことを考えることができるからです。】(3)子どもの尊重
【子どもたちは大人から一方的に指示されたり、規制されたりすることはありません。子どもも大人も同じように一人の人間として大事にされています。】(4)ミーティングで話し合って決める
【スクール全体にかかわることはミーティングで話し合います。みんなで決めて納得したルールは守りながら、自由に過ごすことができます。スクールの方針・予算・スケジュール・人事なども、子ども・スタッフ共に一票をもって決定します。スタッフをだれにするか子どもたちが投票をするスクールもあります。】(5)年齢ミックス
【学年・クラス分けはありません。いろんな年の子ども達がいっしょに過ごす中で、互いに教えあったり影響を受けたりしながら、多くのことを学んでいっています。】
*2019年当時は4歳〜18歳までの子ども達が約35名ほどいたとのことです。
この5つの教育理念を聞いただけでも、いわゆる一般の“学校”とは大きく違うことがわかるかと思います。
本書では、自らも元スクール生である佐々木桃子さんと児島げんき君が、
● デモクラティックスクールの教育とは何なのか?
● 社会に出てからどう思って生きているのだろうか?
という2つの質問を軸に、元スクール生にインタビューしていきます。
インタビュイー(インタビューを受ける側)の話の間に入る、桃子さんとげんき君の2人の意見や感想が長く(特にげんき君!)、話が簡単に流れていかなくて(流さなくて?)逆に面白いです。
読んでいくと、一般の“学校”との対比だけではなく、詰まるところ「教育って何?」「そもそも教育の目的は?」「教えて育てる…って、その行き先はどこ?」などという話に行きついてしまいそうになります。
学校の中でのヒエラルキー
この4月に本書の出版記念イベントがあり、その中で著者2人とインタビュイー5人が集まった座談会のようなものがありました。
そのときに「“学校”では体育会系の子で目立つ子とか派手な子が、なんとなくクラスの中でも階層が上で、地味な子は下というヒエラルキーのようなものがあったのですが、まっくろくろすけではそのようなものはありましたか?」という質問をしました。
回答は「ミーティングのときにまとめ方がうまかったりすると、こいつ凄いなぁって思ったりはする」という感じの答えだったかと思います。なんとなく階層はないというか、物事が縦に並ぶのではなく、横に並ぶ感じがして、それは良いことのような気がしました。
個性を大事に、ということもあるかと思いますが、何が良くて何が悪いかを他人が勝手に簡単に決めないのはいいなぁと。
印象に残った言葉
また、元スクール生で現在は心理カウンセラーをしているTさんの「もっとこう社会が変わってほしいみたいな事ってある?」という質問に対する言葉が印象に残っています。
「それぞれを評価せざるを得ない社会なんだと思うんだけど、それぞれを評価するっていう考え方みたいなのはなくなった方が良いのかなって思う。」
「互いを評価するなんて神様みたいな事は、そもそも人間の生き方として合ってるのかなってたまに思ったりはするけど。」
ある程度決められた物差しで人を測る…それが良いことのように思わない。この言葉を聞いたとき、価値観を根底から揺さぶられるような気がしました。それぞれを評価するということが当たり前ではない社会になったら(そんなことは完全にはならないでしょうが)、社会の向かう先は変わっていくかもしれないなと。
まっくろくろすけは僕が学校に行っているときは全く知らなかった世界です。シュタイナー教育やモンテッソーリ教育なども大人になってから知りました(言葉だけで中身は未だあまり知りませんが…)。
どの教育を受けたからその人がどうなるとか、どういう人生を歩もうとするのがいいのかなどは僕にはわかりません。だから教育については何にも言えないし、この本を読んでも教育についてのモヤモヤが晴れるわけではないですが、桃子さん、げんき君、5人のインタビュイー、一人一人が発する言葉の数々が何より面白いです。
今はこんな時期で学校自体どうなるやらわからない空気ですが、大変興味深い本なので、是非一読してください。
ただし、この本は一般には流通していないので、購入希望の方は以下のメールアドレスまで。
◆democraticbook@gmail.com(佐々木桃子さん・児島げんき君)
おわり
文:みずいけあきら(陽文庫)
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