かきくけコラム :「ブックブック こんにちは」02


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毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。

「陽文庫-アキラブンコ」のみずいけさんと、ブックカフェ・トキシラズの山本さんがかわりばんこにつづる、本にまつわるコラム「ブックブック こんにちは」、2回目はみずいけさんです。

若い人達は読書をするのか?

若い人達は読書をするのか?という問いを立てると、答えとしては読まなくなってきてる傾向がますます強いのではないか、という答えになると思います。(ちなみに、この文脈…というか、このコラム自体の文脈でいうと、漫画を読むなどは、読書にはあまりカウントされてなくて、小説とか、文芸書とかが割と読書に該当という形になってます。もちろんノンフィクション、児童書、ミステリー、理工書、建築書、その他もいろいろあります…)

僕が書店で勤めてるときも、自分がこんな本読んでほしいな〜と思う本を買っていく学生さんは、ほぼ0でした。対象を20代くらいにあげても、ほぼ数人くらいで。漫画とか、資格書、雑誌、婦人実用書、エンターテイメント系(わかりやすいのは百田尚樹さんとかでしょうか)、あとミステリーと時代小説。そういうのは売れるのですが、文学青年(もはや死語?)が読むような本はほとんど、もらわれていかなかったです。

意図?を持って読書をしてそうな人も少なかった印象で、ただ1人、ヒトラーの「わが闘争」を読書感想文の時期でもないのに、買っている女子中学生がいて、「この子、何考えながら生きとんやろ…」と思った記憶があります。制服が少し違ってたから、私立の学生かもしれないですね。その子の本棚は見てみたいな〜と思ったほど印象的でした。

ちかごろの高校生は

高校生を見ていると、僕たちの時代よりもすっかりアベック(古いな…)も増えてるような。姫路城周りを自転車で通過すると、ほんとによく自転車で一緒に帰る高校生アベックを見かけます。昔は割と一緒に帰ったりするのは、コソコソコソコソしてた気がしますが、最近は隠す様子がないところが特徴的な感じがします。

周囲が思っている自分と、自分が思っている自分との間にズレがない人は、周りからも付き合いやすいですし、異性の友達が複数いれば、その中から彼氏彼女に昇格するチャンスも時には訪れます。周りが良く見えてて、集団の中のポジションをつかむ能力が高まっているのかと。

今は、良いのか悪いのか、変に自分のことを悟っているのか、空気を読める男女が増えてきたのか、もうここらでよか…精神が働いてるのか、自分達の身の丈にあった相手を探すのがひと昔前よりうまい気がします。

スマホや携帯、LINEの登場により、昔は喋れなかった異性とも、割と簡単にアクセスできるようになり、喋れない子でも、LINEやメール上では話せると、存在を少なからず主張できるので、卒業まであの子と話したことない…異性と話したことない…という現象が減るのかもしれません。

悶々と考える時間

同時に、自分1人だけで悶々と考えたり、物事を深く考えるようなシチュエーションは減ってるのではないかなぁと。あーしなければならないとか、こうしなければならないという気持ちがあまりなく、飢餓感とコンプレックスの欠如を招いている。自分のこと嫌いになる前に、ちょっと好きになってしまってるんじゃないかなと。

そうなると、本の世界に行く最初の動機は小さくなりそうです。現実逃避したり、本の世界にヒントや、答えを探しに行く理由も薄くなりそうです。

昔は見向きもされなかった人隅々にまで、恋愛という、一瞬自分が昇華したような、承認されたようなものを得ると、もはや1人ウンウンと悩むより、街にでも彼女と買い物に行った方が楽しそうだし。自分と向き合うよりも、すでに異性に向き合ってたり。自分と釣り合うような相手と付き合えているので、一種のコミュニケーション不全という形に陥ってなかったり。

自分を出荷できる時期が、以前より早くなっているのかもしれません。僕などは、ようやく大学入学くらいに、他人に自分を出荷できるような状態になりました。それまでは自分しか見えていない、というか今考えると、自分も見えてなかった気がしますが、20歳前後に他人のことが見えてきて、迷惑かけない程度の、人の中への立ち入り方ができだしたのはその辺りだったかもしれません。まぁそのあとも出荷できる状態やったり、違ったり。(今も出荷できる状態なのかは、はなはだ疑問といえば疑問です…)

今の若い人や学生さんには、もう少し悩んでほしいような気がします。どうせ、社会人になると否が応でも、人の中に入らなければならないし、入れるようにもなってくるので。時間が許すまで、1人で奮闘してほしいと思います。ただ単に、僕がそういう人が好きなのもあるのですが。

さて…では1冊本の紹介を。

02のブック

「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」増田俊也

発売日: 2011年09月
著者: 増田俊也
出版社: 新潮社
サイズ: 四六判変型
ページ数: 702p
ISBNコード: 978-4-10-330071-7

これは、毎月やっている「ブックブックこんにちは」という本の紹介イベントで、4月24日(日)にトキシラズ山本君が紹介してた本ですが、昭和を代表する柔道家木村政彦の評伝です。

ちなみに木村政彦とは…
◯15年間不敗のまま引退した柔道家
◯木村の前に木村なく、木村のあとに木村なし
◯元々、6時間から7時間練習していた。が、絶対に勝利するために辿り着いた結論が「3倍努力」
◯夜になると、大木に帯を巻いて一日1000回打ち込みをし、遂にはその大木を一本枯らす
◯乱取りだけで毎日100本
◯そのあとバーベルを使ったウエイトトレーニング、巻き藁突きを左右1000回ずつ。仕上げに腕立て伏せを1000回行う
◯負けたら切腹
◯腕緘(うでがらみ)という技を開発
腕を捻る、ないしは、伸ばして肘等を極めるという格闘技における関節技を開発
◯腕緘はブラジルやアメリカで「キムラロック」あるいは「キムラ」と呼ばれる(←体操の技みたいですね…)
◯「力道山は俺が呪い殺した」と発言する
◯ブラジルにkimuraという柔術衣メーカーがあった。衿の硬いことで知られる(Wikipediaより)(←この記述はちょっと面白い)

僕はこの木村政彦さんの話を聞くと、元プロ野球選手清原さんの逮捕時に、過去の証言人としてしばしば登場した元オリックス投手の野村貴仁さんを思い出します。
もう7~8年前だったと思うのですが、スポーツ雑誌のNumberで野村氏を高知県まで訪ねるという企画があったのです。

そのときにはすでにあの、仙人風というか、かなり特徴的な外見だったと思うのですが、野村氏の過去のエピソードもびっくりするようなものがたくさんありました。
◯学生時代、オーバースローで砲丸投げをしていた
◯怪我をしたときは、自分で鍼をうっていた(しかも鍼がないときは、鍼らしきものをうっていたと書いていたような…)
◯覚醒剤取締法違反で警察官に逮捕されそうになったとき、逃げ足が早すぎて、警察官から「こんなに逃げ足の早いやつは見たことがない!」と言われたこと。どうやら、本人曰く、オリックスでの現役時代は野手と投手含めて、イチロー以外には足で負けたことない、とのこと

逸話は枚挙にいとまがありません。あの風貌でのニュースの登場の仕方、自宅の散らかり方、後日再度取材を受けたときには、髭を剃って現れる(最初から剃っとけよ!)、少し仲良くなった記者とはキャッチボールを久しぶりにする(しかも球筋が良かった…)。

ぶっ飛んでいるというか、なんというか。もちろん覚醒剤はダメですが、キャラクターの濃さは群を抜いています。こういう人、好きですね…

ノンフィクションで大真面目な本ですが、読み進めていくと、ほんまかいな!と思う部分が多々あり、木村政彦も角度を変えてみれば、かなり滑稽で、珍妙といえば珍妙な人です。イベント時にトキシラズ山本君が木村政彦の逸話を紹介してたら、笑いが少しおこってましたし。

時代背景が今とは違うので、物事への取り組み方やアプローチ、距離感も違うとは思いますが、格闘技に縁のない人は、斜めの見方で読んでみても、面白いかもしれません。

以上

文:みずいけあきら(陽文庫)
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公開日 : 2016-5-4
最新更新日 : 2016-6-1

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