かきくけコラム :「大人にも響く子どもの本 」40


毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。

小さなころから本好きで、常に本を持ち歩く子供だったという姫路在住のイラストレーター、赤松かおりさんによる、大人になってからこそ読みたい子供の本、「大人にも響く子どもの本」はじまりますー。

第40の発見 心配性の人へ:『びくびくビリー』2006

 

11月は心配性の人のための絵本をご紹介します。

<あらすじ>
ビリーはとっても心配性の少年。身の回りのありふれたものがこわくてたまりません。
ビリーの悩みは深刻なのに、お母さんやお父さんは優しいけれどその深刻さを受け止めてくれません。
よその家で寝るのはこわいのに、おばあちゃんちにひとりでお泊りさせます。
やはり寝られず、おばあちゃんの部屋に行くと、おばあちゃんはある人形を見せてくれました・・・。

<心に響く言葉>

おばあちゃんは なにかを さがして、もってきてくれた。
「これはね、しんぱいひきうけにんぎょうっていうんだよ。
しんぱいごとを にんぎょうに うちあけて、
まくらのしたにいれて、おやすみ。
そうすれば、この子たちが かわりにしんぱいしてくれるから、
おまえはぐっすり ねむれるよ」

―『びくびくビリー』p13、アンソニー・ブラウン 作・絵 2006、評論社

絵本の最後には、「しんぱいひきうけにんぎょう」についての解説があります。
グアマテラの伝統で、指の先ほどの大きさの木片と、布切れと糸でできている極小の人形です。
グアマテラでは子供が自分で手作りして、夜寝る前に心配事を打ち明け、枕の下に
入れて眠るという習慣がある。そうすれば、寝ている間に心配はなくなるそうです。

私も子供のころは、ビリーのようにいやなことが起きませんように、
とかいろんなことが怖くて心配でたまらなかったのを思い出します。

子供にとっては深刻なのに、大人に話してもまともに取り合ってもらえない心配を、人形が引き受けてくれたら
とても安心すると思います。

そして大人になった私たちも、子供の心配や不安をそのまま理解することは難しいかもしれません。
けれど、本人にとっては深刻だということを、ビリーのおばあちゃんのようにわかってあげたいし、
「しんぱいひきうけにんぎょう」のような形ででも共感を伝えようとすることが大事なのではないかと思います。


文責:赤松かおり
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赤松 かおり

赤松 かおり

本とお散歩と食べることが大好きなイラストレーターです。webやフリーペーパーなどで、イラストを描いております。

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