毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。

1年に何度かある「第5週目」の水曜日にだけそっとていねいにつづられる、宮下ひろみさんの本についてのコラム「五週目のほんばこ」の8回目です。
やっつめのほんばこ|『きらきら』谷川俊太郎・文 吉田六郎・写真(アリス館)・『雪』中谷宇吉郎(岩波書店)
みなさん、こんにちは。今年もよろしくお願いします。
今日ご紹介するのは
「きらきら」
谷川俊太郎・文 吉田六郎・写真
アリス館
「雪」
中谷宇吉郎 著
岩波書店(文庫)
です。
「きらきら」は子どものためのお話会の講座で紹介されて知りました。
絵本を人に読んでもらうと、子どもの頃に戻ったみたいで、少しくすぐったいような暖かな気持ちになります。
美しく、儚い雪の結晶の写真に、谷川俊太郎さんの簡潔でやわらかな言葉がのっています。
私が初めて雪を見たのはいつだったのか‥もう覚えていませんが、こんな風に感じていたのかな?
まだ言葉にはできないけれど、娘が雪に触れたら、どう感じるかな‥
と思いながら読みました。
巻末の紹介文によると、この写真は吉田六郎さんが北海道・大雪山のふもとに降った天然の雪を、ひとひらひとひら受けとめ、凍えるような寒さの中で顕微鏡撮影されたものだそうです。
その吉田六郎さんが雪の結晶に魅せられるきっかけになったのが、雪の研究者、中谷宇吉郎博士です。
「雪」には中谷さんの研究の始まりから、雪の結晶の撮影、分類、そして人工的に雪を作ることに成功し、結晶の成り立ちを明らかにするまでが書かれています。
私が一番好きなのは、十勝岳中腹の山小屋で雪の結晶の撮影をしていた時の話(p83-)です。
風のない夜、闇の中を頭上だけ一部懐中電灯の光で区切って、その中を何時までも舞い落ちて来る雪を仰いでいると、いつの間にか自分の身体が静かに空へ浮き上がって行くような錯覚が起きて来る。(一部抜粋)
「錯覚」なのだけれど、このなんともいえない浮遊感が直に伝わってきて、とても良いのです。
凍てつく寒さの中での撮影や研究は大変なものだったでしょうが、それを上回る楽しさと発見の喜びに満ちていて、読んでいるこちらもワクワクします。
静かな冬の日に手に取ってみてください。
文:宮下ひろみ