毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
小さなころから本好きで、常に本を持ち歩く子供だったという姫路在住のイラストレーター、赤松かおりさんによる、大人になってからこそ読みたい子供の本、「大人にも響く子どもの本」はじまりますー。
第12の発見 居心地のいい場所を見つけたい人へ:『どろんこ こぶた』1971
2月は、もうすぐ就職活動がはじまる時期です。適職を探しておられる方も多いかもしれません。
今回は、どろんこが大好きなちょっと変わったこぶたのお話をご紹介します。
作者は小学校の国語の教科書にも採用されている「おてがみ」で有名なアーノルド・ローベルです。
<あらすじ>
お百姓さんの家のぶたごやに、こぶたが住んでいました。こぶたはどろんこに沈んでいるのが大好き。なのに、きれい好きなお百姓さんの奥さんに、よかれと思ってどろんこをそうじされてしまいます。怒って家を逃げ出したこぶたは、大好きなどろんこを色々な場所に探しに行きます。
<心に響く言葉>
こぶたにとっては、きのどくではすみません。もうおこってしまいました。「こんなうち、ぴかぴかすぎて、つまらないや。」よるになると、こぶたはとことこ、にげだしました。
―――P20-21『どろんこ こぶた』アーノルド・ローベル作、岸田衿子訳 文化出版局 1971
子どもの頃の私は、こぶたのやることにハラハラしながらこの本を読んでいた記憶があります。「可愛がってくれるお百姓さん夫婦のもとにいれば、安全で快適なのに、なんでわざわざそれを捨てて、どろんこを求めて沼やゴミ捨て場に行って危険な目に遭うの?」
でも社会人になって、自分の適職を探して転職していたころに読み返すと、世間的にかっこ悪くても、自分にとって居心地のいい場所を探しに行く、変わり者のこぶたが自分の姿に重なりました。
他の人にはただのどろんこに見えても、自分にとっては特別な場所です。この本に描かれているどろんこは、それを象徴しているように思われます。
ただ、どろんこを探しに行った先でも「俺たちの沼を横取りするつもりか!」と追い出されたり、どろんこと勘違いしてセメント漬けになってしまったり、こぶたは失敗を繰り返します。
結局は理想のどろんこなんて簡単には見つからないわけですが、簡単に見つかったら、それこそ面白くないですよね。
もちろん私の考えなので、押しつけるつもりは全くありませんが、たとえ可愛がって保護してくれる安全な環境でも、自分にとって納得できないなら、「ぴかぴかすぎて、つまらないや。」と、自分にとって心安らぐ場所を探しに行くモチベーションを高めてくれる一冊だと思います。
文責:赤松かおり
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