毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
「陽文庫-アキラブンコ」のみずいけさんと、Books&cafe トキシラズの山本さんがかわりばんこにつづる、本にまつわるコラム「ブックブック こんにちは」、64回目は陽文庫みずいけさんです。
64のブック
「同窓会に行けない症候群」鈴木信行 日経BP
発売: 2019/8/22
著者: 鈴木信行
出版社: 日経BP
サイズ:
ページ数: 236ページ
ISBN: 978-4296103294
日経ビジネスで連載されていたものをまとめた一冊。
その名の通り、同窓会に行けない人を理由別に考察している本だ。
この場合の同窓会とは、仲の良い数人が集まる定例会のようなものではなく、不特定多数の人が集まる大規模な同窓会のことだろう。
男性の事例が多く、女性が読んでもあまりピンとはこないと思うが、所々思い当たる節がある人もいるかと思う。
本書の指摘によると、男性の欠席の理由として多いのが、社会的なステータスにまつわるものだそう。
今の若い世代の人達が立身出世を狙っているのかはわからないが、「故郷に錦を飾る」や「末は博士か大臣か」、さらに言うと「身をたてる」という言葉さえ、なんだかもうしっくりこない気がする。
が、日経ビジネスを読む世代(30代~50代?)にはまだまだそのような成功物語は、多少なりとも生きているように思う。
ライフステージが色々と変化していく女性とは違い、結婚しているかしていないか、子供がいるかいないか等ではなく、企業の中で(とはいえ、たぶん中小企業での出世話は対象外のような気もするが)どんなポジションにいるか、仕事先はどんなところか、または、どんな稼ぎ方でも単純に大金を稼いでいるのも、まだまだ男をドヤ顔にさせるものだと思う。
私は(同窓会自体ないのだけれど)とにかく、自分の好きなものを否定されたくない、自分の心の在り様を否定されたくない、その危険性をはらむようなとこには行きたくない、という理由で同窓会には行きたくない。
しかしながら、普段生活していてもびっくりするほど学生時代の知り合いとは会わないが、普段、何を考えながら同世代の人が生きているのかは気になる(これから何をよすがに生きていくのか?みたいな)。
けれど、同窓会の数時間の間に、自分の知りたいところまで話が進んだり、自分の本当に知りたいことをそんな短時間で聞ききれるとは思えない。
同窓会に行きたくないのは人生がうまくいっていないからと言われそうだが、ある程度自分ではうまくいっていると思っていたとしても、そんな場に行って、今の自分のことをよく知らない人に「あなたの人生イマイチよ」などと、他人に言われたくない。
とにかく自分が機嫌良く、自分の好きな人とだけ(なるべく!)付き合っていきたい、そんな風に周りも固めたい、そしてそうなるように日々努力しているのに、自分の好きではない人と関わりあうことに、もはや何の意味があるのかよくわからないのだ。
地域別に同年齢だからといって無作為に集められた人の中に、わざわざ針を元に戻してまで何かしようとはどうも思えない。
マウントを取らず、適度な距離感で、相手のことを尊重しながら迫って来てくれたら良いのだけれど、自分のことで何かとやかく言われたら、きっと全力で相手のことを心の中で罵ると思う。
そんな、いがみ合ったり、他人の不幸を喜んでいる時間はもうただただ無意味に思えて仕方がない。
そんなこんなを改めて考えさせられた本ですが、書いているうちに憑き物が落ちたのか、なんだかスッキリしたので、同窓会についてはこれからしばらく何も考えずに済みそうです。
女性にはピンとこない、やや男性向けの本ですが、本書内の、漫画ちびまる子ちゃんの登場人物における同窓会の出席可否の考察は面白いです。
考察を読むとフムフムなるほどと思え、その理由にも概ね納得。
しかしながら、漫画中では『ザ・普通の子供』という設定のちびまる子ちゃん(さくらももこさん)が、実は一番有名になり出世頭なのはご愛敬。
良かったらまた同窓会の出席について考えてみてください。
おわり
文:みずいけあきら(陽文庫)
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