毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
小さなころから本好きで、常に本を持ち歩く子供だったという姫路在住のイラストレーター、赤松かおりさんによる、大人になってからこそ読みたい子供の本、「大人にも響く子どもの本」はじまりますー。
第34の発見 大事なものをなくしたことがある人へ:『わすれもの』2017
ついに2022年がはじまりましたが、1月は「わすれもの」の視点で書かれた絵本をご紹介します。
<あらすじ>
ミナは、大好きなひつじのぬいぐるみと公園に遊びに行きましたが、遊びに夢中で忘れて帰ってしまいました。
ひつじは、カラスにつつかれたり、ベンチから転げ落ちながらも、迎えがくると信じています。
けれど暗くなり、雨も降ってきて・・・。
<心に響く言葉>
ねこのおかあさんは ひつじを ベンチにおろすと いいました。
「あんた すてられたのかい?」
ひつじはびっくり。
「ちがうよ、ちょっと わすれものに なっただけ!」
「わすれもの?」
「わすれもの。 すてられたら むかえはこないけど
わすれものは むかえがくるんだ。 ミナはきっとくるよ」――― P11『わすれもの』豊福まきこ 作・絵、BL出版、2017
わすれもののぬいぐるみの視点で、おうちに帰りたい心細い気持ちがこれでもかと描かれています。
ぬいぐるみのひつじが雨に濡れて持ち主が迎えにくるのを信じて
じっと待っている姿がとってもけなげ。
カラスにつつかれて「いたた、いたた」しているところなんてもう切なすぎて、抱きしめたくなります。
ぬいぐるみに限らず、財布でも傘でもかばんでも、長く大事に使っていると、そのもの本来の価値だけでなく、
それにまつわる思い出が一緒にくっついています。
そういう大事なものをなくすと悲しいし、戻ってきたときの喜びはかえがたいです。
この気持ちは老若男女関係ないんだな、そして今までどこかに忘れてそのままになってしまったものたち、今でも忘れてないよ、迎えに行けなくてごめんね・・・と思い出させてくれる絵本です。
文責:赤松かおり
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