かきくけコラム :「ブックブック こんにちは」68

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毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。

「陽文庫-アキラブンコ」のみずいけさんと、ブックカフェ・トキシラズの山本さんがかわりばんこにつづる、本にまつわるコラム「ブックブック こんにちは」、68回目はトキシラズ山本さんです。

68のブック

『決闘のヨーロッパ史』 浜本隆志 菅野瑞治也 河出書房新社

『決闘のヨーロッパ史』
発売日 : 2021/9/24
著者 : 浜本隆志、菅野瑞治也
出版社 : 河出書房新社
ページ数 : 194ページ
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4-309-22829-7

小学生の頃、「オリンピックは参加することに意義がある」と教員の方がおっしゃっていました。でも実際に始まってみると、日本初金メダル、惜しくも銀、過去最多メダル数なんて事が世間を賑わし「結局勝敗にこだわってますやん」と大人の欺瞞を見た!と張り切るような嫌な小学生でした。

とは言え、勝ちを目指して競技に参加する以上、そこにこだわるのも当たり前です、それが決闘の精神から始まっているとなれば、勝ちたい気持ちは必然と言えるでしょう。何せ、決闘に勝つということは、自分の正しさの証明なのですから。

決闘の歴史は古く旧約聖書から始まり、中世の決闘裁判、騎士道的な名誉の決闘、それがだんだんと廃れていき、エンターテイメントはスポーツ競技に置き換わり、裁判は法廷によって決着するようになりました。それを文化や、社会情勢などから読み解いていくのが本書です。

では、なぜ廃れたのかというと、単純明快、危ないからです。有能な貴族や芸術家、果ては王様まで、傍目にはどっちでもいいような理由で命を散らしていくわけですから、為政者としてはあの手この手で決闘を禁止していきます。それが功を奏したのはイギリスで、早いうちに決闘は廃れていきました。曰く「決闘はジェントルじゃない」さすがは紳士の国です。

決闘が残った国はドイツです。何と今なお、メンズーアと呼ばれる大学生の決闘が存在するようです。何の遺恨もない大学生同士が防具をつけて、真剣を持って、仁王立ちで斬り合うという、およそ正気とは思えないイベントがあるそうです(死人は出ないように医者が待機しています)

トリビアルな決闘としておもしろかったのはグリーンランドの決闘・歌合戦です。

“グリーンランドのあるイヌイットが、他のイヌイットに侮辱されたと感じた場合、(中略)公衆の面前で歌による「決闘」が行われた。その侮辱された男は、皆を前にして、相手に対する嘲笑の歌を歌う。(中略)すると今度は、「決闘」を申し入れられた方の男が、同様にウイットに富んだ痛烈な歌で反撃し相手の嘲笑の歌をはねのける。この男の防御の歌が、不成功に終わったと聴衆が判断した場合、この男の負けとなった。そして勝者には、敗者の所有物の中で一番いいものを自分のものにする権利が与えられた。しかし、これとは逆に、先に攻撃をしかけた男の歌がウイットに欠け、弱々しく気のぬけたものであれば、彼は仲間とともに赤恥をかかされてその場から追い払われた”

ラップバトルの起源がまさかグリーンランドにあったとは。他にもゲーテの決闘事件や男対女の決闘ルールなど盛り沢山の内容です。ぜひご一読を。ちなみに日本での決闘は犯罪です。

文:山本岳史(トキシラズ)
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あさのは商店

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姫路生まれ・姫路そだち。姫路→大阪→徳島→姫路。
肌の弱い自分が必要なものを近くで買えるとうれしいなーと、肌にやさしい日用品「あさのは商店」をしています。
趣味は、ウクレレ・縫い物・言葉の観察など。

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