毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
小さなころから本好きで、常に本を持ち歩く子供だったという姫路在住のイラストレーター、赤松かおりさんによる、大人になってからこそ読みたい子供の本、「大人にも響く子どもの本」はじまりますー。
第35の発見 怒るのが苦手な人へ:『目に見えない子』1962
2月は『ムーミン谷の仲間たち』から、ひにくをいわれすぎて姿が見えなくなってしまったニンニのお話をご紹介します。
<あらすじ>
ニンニは、一緒に住んでいるおばさんに冷たい仕打ちを受けていました。
心に傷を負うごとに、だんだん姿が見えなくなってしまったのです。
そこで、どうにかできないかとムーミンの家に連れてこられました。
ある日、ムーミンパパがママをふざけて海に落とそうとしていると勘違いしたニンニは、
怒ってしっぽにかみつきます。
ニンニが怒りを爆発させたとき、ニンニの顔はついに見えるようになり、ムーミンたちは大喜びしました。
<心に響く言葉>
「あなたたちもごぞんじのとおり、人はあんまりいく度もおどかされると、ときによって、
すがたがみえなくなっちまうわね。そうじゃない?」
(中略)
「毎日毎日、一日中ひにくをいわれるものだから、とうとうあの子は青ざめてしまって、
はしのほうから色あせていき、だんだん見えなくなったんです。」――― P164ー166「目に見えない子」『ムーミン谷の仲間たち』ヤンソン 作・絵、講談社文庫、1962
つまらないことでいつも怒っている人は困りますが、逆に理不尽な目にあっても我慢してちゃんと怒れないと、
自己肯定感が下がって「消えてしまいたい、いなくなってしまいたい」と思うようになってしまいます。
ニンニの姿が見えなくなるのはそれをあらわしていると思います。
怒るのは悪いことだと思われがちですが、感じている怒りを抑えつけず表現することで、
大事なものを守ることができるという面もあります。
ニンニのエピソードは、自分のために怒ることが強くなる力になることもあると教えてくれます。
文責:赤松かおり
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