毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
「陽文庫-アキラブンコ」のみずいけさんと、ブックカフェ・トキシラズの山本さんがかわりばんこにつづる、本にまつわるコラム「ブックブック こんにちは」、15回目はトキシラズ山本さんです。
35歳にして、ついに
私ことトキシラズ山本は35歳くらいなのですが、この歳にしてついに、「お酒おいしいかも」と感じるようになりまして、フフフ。
仕事終わりにね、一杯ひっかけたりしてるわけですよ、ねー、大人でしょ?
これで嫌なことがあったら、酒に溺れて、街でゴミ箱をひっくり返し、「バカヤロー!」とか叫んで、それを聞きつけた街のチンピラに「おいおい、バカヤローって誰のことだい?」って因縁つけられてボコボコと殴られる。
そんな未来も可能性を帯びてきたわけです。
はじまりはドストエフスキー
なんでこんなことになったのかというと、始まりは、ドストエフスキーです。
ドストエフスキーといえば言わずと知れたロシアの文豪、本好きなら一度は読んでないといけないような巨匠中の巨匠。
なんですが、読んでなかったんですねー、はい。
まず本が分厚い、そして、登場人物の名前が長い、ロジオン・ロマーヌイチ・ラスコーリニコフとかアルカージィ・イワーノヴィチ・スヴィドリガイロフとかね。
読み通せるとは思えない。
15のブック(1)
『『罪と罰』を読まない』岸本佐知子・吉田篤弘・三浦しをん・吉田浩美
で、そんな時に見つけたのが、岸本佐知子・吉田篤弘・三浦しをん・吉田浩美『『罪と罰』を読まない』(文藝春秋)。
『『罪と罰』を読まない』
発売日: 2015年12月
著者: 岸本佐知子・吉田篤弘・三浦しをん・吉田浩美
出版社: 文藝春秋
ページ数: 291ページ
ISBN: 4163903666
こちらは、ドストエフスキーの長編『罪と罰』を読んだことがない人たちが、読んでないまま集まって、読書会を開くという前代未聞の企画本。
もちろんそれだけではただの雑談になってしまうので、最初と最後のページと、適当に指定したページだけをその場で読んで、物語を推測しながら作品について語り合う。
これがすごく面白かった!
1000ページ以上の作品を飛び飛びで10ページほど読んで正確に推測するのは当然不可能で、4人の推理したストーリーも実際とはまったく違う。
しかし、少ないヒントから行間紙背を読んでいく様は、作家たちの思考の羽ばたきを見るようであり、なかなかにスリリングなんです。
特に三浦しをんさんの推理は見もので、大胆な推理で参加者と読者の度肝を抜いてきます。
『罪と罰』を読んだ人も読んでない人にもオススメの一冊です。
15のブック(2)
『黄金の丘で君と転げまわりたいのだ』三浦しをん・岡元麻理恵
それで、やっぱ三浦しをんさんは面白いなー、となったわけです。
この頃はあまり読んでいなかったので、久しぶりに何かエッセイでもと思って手に取ったのが、三浦しをん・岡元麻理恵『黄金の丘で君と転げまわりたいのだ』(ポプラ文庫)。
『黄金の丘で君と転げまわりたいのだ』
発売日: 2015年12月
著者: 三浦しをん・岡元麻理恵
出版社: ポプラ社
ページ数: 473ページ
ISBN: 4591147088
やっとお酒の話です。
こちらは、酒は酔えればそれでいい、肴は炙ったイカでいい、というような酒好き三浦しをんさんが、華やかなるワイン道を極めて行かんとするエッセイ。
講師の岡元麻里絵さんが用意した何本かのワインを三浦さんと編集者三名(ワイン舌丁稚)が試飲。
価格あてや生産国あてをしながら、楽しく学んでワインに詳しくなっていく、という趣向ですが、なかなか簡単にはいかないもので、価格順を必ず反対にする人や、やたらと幻視的な感想を言う人、ワインの持つアスパラガス香に敏感な人。
個性的な人たちが読み物としては盛り上げてくれます。
では、この本を読むとすごいワイン通が生まれるかといえば、決してそんなことはありません。
しかし、興味は出てくる。
これまではワインのブドウに品種がある、なんて考えてなかったし、温度で味が変わる、なんて思ってもみなかった。
知ると実践したくなるのが人情で、実践してみて違いがわかると楽しくなる。
楽しくなると、おいしく感じる。
てな訳で、今はワインが部屋にあるわけです。
本の世界が巡り巡って実生活にも影響します。というエッセイでした。
ではまた。
<追伸>
『罪と罰』は読みました。
思ったより火曜サスペンス劇場みたいな感じで、とても面白かったです。
異常に独り言の多い火サス。
こちらもおすすめ!
『罪と罰』上・下
発売日: 1987年6月
著者: ドストエフスキー・著、 工藤 精一郎・訳
出版社: 新潮文庫
ページ数: (上)585ページ、(下)601ページ
ISBN: (上)4102010211、(下)410201022X
文:山本岳史(トキシラズ)
ブログ ブックカフェ・トキシラズ