かきくけコラム :「ブックブック こんにちは」31


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毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。

「陽文庫-アキラブンコ」のみずいけさんと、ブックカフェ・トキシラズの山本さんがかわりばんこにつづる、本にまつわるコラム「ブックブック こんにちは」、31回目はトキシラズ山本さんです。

31のブック

『幻の惑星ヴァルカン アインシュタインはいかにして惑星を破壊したのか』トマス・レヴェンソン

趣味がない。というようなことをよく耳にします。「休みにする事がない」とか、「暇なとき何してますか?」とか。わたしはどちらかと言うとやりたい事が多くて時間がないので、その問いにある種の羨ましさを感じます。

本を読むようになると、とにかく‘暇な時間’というものが無くなってしまう。次から次へと発売される本、それに加えて過去に出版されてた本が無限のように存在している。そんな面白そうな本を探して、買って。というか、いま手元にある本でさえ持て余し気味なのに、さらに増やすと混迷と時間不足に拍車がかかってしまう、一体どうすりゃいいんだい?というのが常にある問題です。

でも、今日のコラムはこんな事が言いたいわけではなくて、趣味でやっていた事がとんでもない事態を招いてしまうこともある。という本を紹介します。

『幻の惑星ヴァルカン アインシュタインはいかにして惑星を破壊したのか』
発売日: 2017/11/9
著者: トマス・レヴェンソン・著、 小林由香利・訳
出版社: 亜紀書房
ページ数: 237ページ
ISBN: 9784750515281

 

19世紀、天文学の大きな問題といえば水星の軌道でした。何度計算しても、その軌道が微妙にずれるのです。当時、海王星を発見して天文学会でトップに君臨していたルヴェリエは

「こらー、水星の軌道より内側に、なんやあるんちゃいまっか?まあまあ大きい星とかなんかそんなんが!ようわからんけど」(意訳)

という発表をします。それからというもの業界では新惑星探しにおおわらわ、大規模な探索が行われますが、それを最初に「観測」したのは、なんとアマチュア天文学者の医師・レスカルボーさん。仕事の合間にサラッと見つけます。自分が新惑星を発見したい!っていうか普通に考えて俺が発見するだろうと思っていたルヴェリエはレスカルボーにくってかかります。

「われホンマにみたんけ?」(意訳)

突如現れた業界の雄に素人のレスカルボーはタジタジ、なんとか説明を試みますがその様子は子羊のように弱々しい。そこにたたみかけるルヴェリエ

「自分、こんな時計使ってるの?これ秒針無いやん。今何時代やおもてんねん!」(意訳)

そこはお医者のレスカルボー反撃に出ます。

「おうおう、こちとら医者だぜ?毎日患者の脈とってんだ、秒を数えるなんぞ朝飯前、いや寝てたってできるぜ!」(意訳)

そんなやりとりがあったかなかったか、侃侃諤諤の議論の末ついに新惑星が発表されます。それが、ヴァルカン。太陽と水星の間にある星です。

これにて一件落着。とは当然ならない、そんな星ないですからね。以来、幻の星を観測しようと世界中の人物が名乗りをあげます。日食一回で星を十個発見する男ワトソン博士。ルヴェリエを継ぐ逸材サイモン・ニューカム。言わずと知れた発明王・エジソン。無い星を探して多くの学者が挑み、辛酸を舐め、諦めかけたとき、やっぱりあるかもという発見(間違い)に翻弄される。以後延々60年間このやりとりが続き、結局無いことを証明するのはMr.相対性理論・アインシュタイン博士。

今では誰も話題にしないような幻の惑星から天文学史を紐解き、科学の発展は試行錯誤の連続で、高度に泥臭いものなのだが、だからこそ信のおけるものだとおもえる、そんな一冊です。

文:山本岳史(トキシラズ)
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公開日 : 2018-10-10
最新更新日 : 2018-10-10

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