かきくけコラム :「くらしとしごと」vol.8

毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。

かきくけコラム
みんなの「かきくけコラム」

毎月第3週目のコラム「くらしとしごと」。書いてくださるのは、神河町長谷でコワーキングスペースkajiyanoを運営する山口なおさんです。

第8回 くらしとしごと 「農家=フリーランサー!!」(農家 加瀬澤智昭さん)

毎月第2土曜日にコワーキングスペースkajiyanoで開催中の「くらしとしごと」のイベントレポートと次回の予定内容について書き綴っていきます。

今回のゲストは、農家として活躍するOK農場オーナー・加瀬澤智昭さんです。2014年、福崎町で初となる新規就農者として西大貫地区で就農。ほどなくして、土建屋さんとしてのお仕事もスタート。

「農家と土建屋ってなんで?」「普段どんなことを考えてるの?」加瀬澤さんのワークライフスタイルや思いをお聞きしました。

加瀬澤さんとの出会い

私が2012年に予約制の古民家リラクゼーションサロンを始めて間もない頃、友人を介して出会いました。その頃、加瀬澤さんとは外のイベントで出会ったり、うちの古民家で開催していたおゆずりイベント「お福分け」にたびたび参加してくれていたりと、ゆるやかな交流がありました。

その後、わたしが結婚を機に長谷に移住。結婚・移住した翌年から米作りに挑戦しましたが、慣れない斜面の畦草刈りでバランスを崩した夫が足を骨折。。。そのとき、「お見舞い代わりに刈っちゃるわ」とヘルプで駆けつけてくれたのは本当に有り難かった思い出です。

現在では毎年加瀬澤さんのお豆を購入して手作りお味噌を作っているのですが、それがお客様に大好評!わたしたちも毎年楽しみにしています。また、kajiyanoの貸し農園で活動している自主子育てサークルさんで育てているお豆も加瀬澤さんの農場のもの。農作物を通してゆるやかにつながっていることが嬉しいです。

OK農場ができるまで

加瀬澤さんは1979年姫路生まれ。愛媛大学在学中に農業に出会い、ネパール人留学生のためにインディカ米を作り始めました。また、ゼミの研究の一環としてネパールへ留学。このときの経験が今にもつながっているといいます。

卒業後、農業に関わる仕事をしたいという思いで姫路の農業法人にて5年勤務。そして2005年、縁があってネパール料理店の経営を始めることに。

ちなみに農業法人時代にもインディカ米を栽培していて、お店が始まってからは敷地内で育てた葉物野菜を料理に使用するなど、常に農業とのつながりはあったそうです。

ネパール料理店のあった立地は大手企業が立ち並ぶ工業地帯。営業には困らず、順調に3店舗も出したそうです。そんな中、3店舗目を出した直後の2011年に東日本大震災が発生。数日間全くお客さんが来ないという経験をします。その時に「世情に左右される仕事はいやだ。やっぱり農業がしたい!」と、パートナーのネパール人にお店を譲り、農家として再出発することに。奥さんの実家のある福崎町にて2014年新規就農を果たしました。

はじめて田んぼを貸してくれた方が、今でもお世話になっている土建屋の社長。
どんどん農地が増え、現在は10町(100ha)!米・ヒエ・アワ・キビ・もち麦などの雑穀のほか、大豆を中心に育てている加瀬澤さんですが、就農して3、4年は野菜作りもしていたそうです。

「何をつくるかが大事。性格にもよるし、土地にもよる」

野菜作りは性に合わなかったそうです(笑)

2018年には認定農家に。その頃から完全オーガニックでの栽培ができるようになったそうです。地元のタズミの卵で有名な田隅さんから乾燥鶏糞を分けてもらい、強力な肥料として活用。土建屋の仕事で出てくる草や土、泥は畑や田んぼに入れる。いずれも処分する場合は産業廃棄物扱いとなり、処分料が発生しますが、そのコストが浮くことで発注元の支払いが少なくて済み、農家としても肥料をタダでもらえて、誰も損していない、とても合理的な循環が生まれています。

「農家は、農業をしている自営業者(フリーランサー)」。
通常の工程だとゴミになってしまうものを、有効に活用して経営に役立てていく。飲食店オーナー時代に培ったコスト感覚も生かした逆転の発想と合理的な思考が加瀬澤さんの強みなのだと感じました。

これからの夢

新規就農者として西大貫地区に飛び込んで以来、地域とも積極的に関わっている加瀬澤さん。
高齢化と人口減の現状を目の当たりにして、今の保全された環境をどう維持していくかを真剣に考えておられます。

試みの一つが、今年から試験的に導入した“ヤギーズ”たちの力を借りた「ヤギ除草」。

実は刈払機を使用した草刈り事故により年間数十人もの人が亡くなっていて、その多くは斜面での草刈りにおいて。また、加瀬澤さんの集落で水を引いている貯め池の草刈りも危険な作業だといいます。悲惨な事故を防ぎ、少ない人でも効率的に管理できるような仕組みを目指し、ヤギの力も生かして草刈り作業をできるだけ安全かつ省力化したいと考えています。

「人は絶対に減っていくけど、今ある仕事のクオリティを保ちたい。そのためにはシンプルなシステムを作りたい。」
飄々と、人並みはずれた行動力を持つ、加瀬澤さんのこと。そう遠くない未来に実現しそうな気がします。

OK農場 https://ok-noujo.jimdofree.com/

●次回のお知らせ #12●

2/8(土) ゲストと内容は交渉中です。お楽しみに!

くらしと、しごと。それぞれがどう関わり合い、人生の豊かさにつながっていくのか。ちょっと立ち止まって考えてみるひとときになれば幸いです。

文:山口なお
  @kajiyano
  @kajiyano/谷間の家さんきら
  https://kajiyano.ch/

あさのは商店

あさのは商店

姫路生まれ・姫路そだち。姫路→大阪→徳島→姫路。
肌の弱い自分が必要なものを近くで買えるとうれしいなーと、肌にやさしい日用品「あさのは商店」をしています。
趣味は、ウクレレ・縫い物・言葉の観察など。

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