かきくけコラム :「ブックブック こんにちは」46

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毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。

「陽文庫-アキラブンコ」のみずいけさんと、ブックカフェ・トキシラズの山本さんがかわりばんこにつづる、本にまつわるコラム「ブックブック こんにちは」、今回はトキシラズ山本さんです。

46のブック

『i』西加奈子 ポプラ社

『i』
発売日: 2016年11月
著者: 西加奈子
出版社: ポプラ社
ページ数: 303ページ
サイズ: 四六判
ISBN: 978-4-591-15309-3/p>

皆さんこんにちは、トキシラズの山本です。いきなりですけど、高校の時、数学好きでしたか?私は、わりと好きでした。「わりと」ってつけたのは、「でも、点数良くなかったじゃん」と突っ込まれると、ぐうの音も出ないからです。

“「この世界にアイは存在しません」”

高校の入学式の翌日、数学教師の放ったこの一言から始まるこの『i』という小説は、複雑な生い立ちを持った少女が、大人になり、自分を受け入れていく成長物語です。

数学で言うところの「i」というのは、二乗すると-1になる数で、この世に存在しない虚な数、すなわち虚数と習いました。多分。

この一言に教室の中で一人だけ衝撃を受けた人物がいます、それがこの小説の主人公、ワイルド・曽田・アイです。名前のインパクトがすごいんですが、父親がアメリカ人、母親が日本人で二人が引き取った養子、なんですが、アイはシリアの生まれで、さらにアメリカからの帰国子女。という、生い立ちのプロフィールが複雑すぎて、なんか凄そうねー、くらいの感想しか持てませんが、アイ本人はいたって控えめな人物です。

「この世界にアイは存在しません」この一言が呪いのように頭から離れず、生活の中で事あるごとに、自問します。シリアで生まれ実母実父の存在も知らない、そんな自分が裕福な家で、何不自由なく暮らしていいのだろうか?恵まれた自分と、いま食べるものや寝る場所もなくゴミ山にいる子供とどこで道がわかれたのだろうか?私は、存在していいのだろうか?

様々な出来事と、数々の出会い、その中でワイルド曽田アイは自問自答に決着を見ることができるか、過去の名作にはない、今という時代に生きる名作です!

蛇足です、「この世界にアイは存在しません」って言った、この高校教師なんですが、もうちょっと気を使って喋らないとダメなんじゃないかと思いませんか?アイっていう名前の人なんて日本にいくらでもいるわけです。アイだけじゃない、アイ子とかアイ之助とか、いっぱいいるわけです。ましてやワイルド曽田アイですよ、名簿みた時点で、「この世界にアイは存在しません、はまずいなぁ、他の話で行くか」くらいのアドリブ力はあって然るべきなんです。

それをこの教員はペラペラと、しかも二回言ったっていうんですよ、たぶんキメ顔で。もっと思春期に配慮しろよー、ガラスのハートなんだからー、て思ってしまったなぁ。まあ、この教師は、思わぬ場面で、ちょっとした報いを受けることになりますので、その辺も文中でご確認いただければ幸いです。ではまた。

文:山本岳史(トキシラズ)
ブログ ブックカフェ・トキシラズ

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あさのは商店

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姫路生まれ・姫路そだち。姫路→大阪→徳島→姫路。
肌の弱い自分が必要なものを近くで買えるとうれしいなーと、肌にやさしい日用品「あさのは商店」をしています。
趣味は、ウクレレ・縫い物・言葉の観察など。

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