かきくけコラム :「大人にも響く子どもの本 」17


毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。

小さなころから本好きで、常に本を持ち歩く子供だったという姫路在住のイラストレーター、赤松かおりさんによる、大人になってからこそ読みたい子供の本、「大人にも響く子どもの本」はじまりますー。

第17の発見 食欲がない人へ:『ガブルくんとコウモリオニ』(2013)

7月にご紹介するのは、食欲が落ちている時にオススメの作品です。(現在絶版ですが、図書館で読めます)

<あらすじ>

オオカミのガブルくんのつくる料理はとてもおいしいので、友達や、お月さまもわざわざ食べにくるほどです。
ある日、この世で一番おいしく100年に一度しかならないチョコラボンボンの実がなったという話をきいてしまい・・・。

<心に響く言葉>

そのばん、ガブルくんは ねむれなかった。
おつきさまが「このよで いちばん おいしい」と、いう チョコラボンボン!
100ねんに 1どしか 実がならない チョコラボンボン!
もちろん、ガブルくんは たべたことが なかった。
もう、たべたくて たべたくて たまらない。
でも、コウモリやまには おそろしい コウモリオニが いる。ああ、どうしよう……
―――P6『ガブルくんとコウモリオニ』高谷まちこ 復刊ドットコム 2013

この世でいちばん美味しいという幻の食材「チョコラボンボン」のため命がけのガブルくんの、料理に対する執念がすごい!
色んな怪物に襲われながらも夢中で探し続ける姿に料理人魂を感じます。

苦労の末手に入れたチョコラボンボン、一体どんな味がするんだろう・・・と読むととてもお腹がすきます。

よく嫌われ者にされるオオカミがヒーローとして活躍するのも温かい気持ちになります。

ラストではチョコラボンボンの味がどうなのかは何も書いてありません。
ですがとにかく美味しそうで、食べてみたくてたまらなくなります。

大人になると、ストーリー展開や人間関係を追うことに必死になってしまいますが、
この本は怪獣や食材が細かく描き込まれていて、ひとつひとつのディテールまで見ごたえ十分。
五感をフル回転させて、描かれているものを想像させる力があります。

物語の中に入り込んで、私たちもガブルくんと一緒にチョコラボンボン探しの旅ができます。
大人になった今でも、本を読むことはまさに冒険だということを確認させてくれる絵本です。


文責:赤松かおり
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赤松 かおり

赤松 かおり

本とお散歩と食べることが大好きなイラストレーターです。webやフリーペーパーなどで、イラストを描いております。

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