かきくけコラム :「大人にも響く子どもの本 」20


毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。

小さなころから本好きで、常に本を持ち歩く子供だったという姫路在住のイラストレーター、赤松かおりさんによる、大人になってからこそ読みたい子供の本、「大人にも響く子どもの本」はじまりますー。

第20の発見 厳しい世の中を生き抜きたい人へ:『バンビ』(1923)

10月にご紹介するのは、厳しい時代を生き抜くためにも読みたい本です。

<あらすじ>
森に生まれた子鹿バンビが、初めてのものごとにあれこれ驚きながら、だんだん鹿の暮らしを覚えていきます。
バンビの父でもある鹿の王は、ここぞというときにバンビを助けながら、厳しい自然や恐ろしい人間から真に生き抜く野生動物の知恵を授けます。

<心に響く言葉>

ひとりでいなくちゃだめだ、
バンビがまだ子どもだったときに古老はそうおしえてくれたのです。
その後もずっと、今日にいたるまで、古老はバンビにたくさんのことをおしえ、
たくさんの秘密をあかしてくれました。
そのたくさんの教えのなかで、やっぱりこれが、ひとりでいなくちゃだめだ、
というこれが、いちばん大切なことでした。
自分をしっかり保っていようとおもえば、生きるということをわかろうとおもえば、
聡明になりたいと思えば、ひとりでいなくてはならないのです!
―――P284『バンビ』フェリークス・ザルテン作 岩波少年文庫 1923

ディズニーアニメしか知らなかったので、バンビってこんな話だったのか・・・と原作を読んで驚きました。
森の動物たちが仲良く暮らす、ほのぼのした物語だと思っていましたが、
自然の厳しさと人間の恐ろしさがまざまざと感じられました。

バンビの父、鹿の王は命の危機にある時は全力で助けますが、普段はバンビがさびしがっても「ひとりでいることができぬのか」と手を出さず、目の前の現実に向き合わせ、自主的な判断と行動を促します。

アニメと大きく違うのは、バンビの妻ファリーネの双子の弟ゴーボの話でした。

ペットとして人間に飼い慣らされ、太って色つやよく育ったゴーボは、鹿として間違ったうぬぼれをもつようになり、人間を信じきっていたのにあっけなく殺されてしまいます。

それでも最後まで、自分は人間に好かれていると主張し続けるのがあわれでした。

現代の私たちも、このコロナの状況がずっと続く可能性もあり、この先どうなっていくか色々な情報はあっても、これが確実!ということが分かるわけではありません。

最終的には世界や社会情勢がどうあれ、「自分はどうするか」は一人で考えていかなくてはなりません。

景気が悪かろうが、世の中が大変だろうが自分で情報を集めて、判断しなくてはなりません。

周りに振り回されないぶれない生き方をバンビと鹿の王の野生の知恵に学べるように思えました。


文責:赤松かおり
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赤松 かおり

赤松 かおり

本とお散歩と食べることが大好きなイラストレーターです。webやフリーペーパーなどで、イラストを描いております。

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