毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
「陽文庫-アキラブンコ」のみずいけさんと、ブックカフェ・トキシラズの山本さんがかわりばんこにつづる、本にまつわるコラム「ブックブック こんにちは」、59回目はトキシラズ山本さんです。
59のブック
『生きるとか死ぬとか父親とか』ジェーン・スー 新潮文庫
『生きるとか死ぬとか父親とか』
発売日: 2009/06/24
著者: ジェーン・スー 著
出版社: 新潮社
ページ数: 246ページ
サイズ: 文庫
ISBN: 978-4101025414
この頃ラジオをよく聴くようになりました。ケーキを作ったり運転の時はだいたいラジオを聴いています。今回の本の作者もラジオパーソナリティとして名を馳せている人物です。
TBSラジオで「ジェーン・スー生活は踊る」という番組をされているのですが、その中で何度か父親のはなしをされていました。だいたいは悪口で、いわく、昔ながらの男性中心的価値観で「男は、女はこうあるべし」という考えを変えられない、よって世の男女同権の流れにもついていく気がない。というような、わりと真剣な批判でした。
タイトルからもお分かりかと思いますが、その父親のこそ本書のメイン登場人物です。なのですが、ラジオを聴いて当初思い描いていた人物とは少し異なる印象を受けました。
父親はおそらく、対外的には人気のある人です。人当たりもよく、オシャレで、楽しい。行動もダイナミックで面白そうだし、魅力的な人物に思えます。しかし、同じ個性の裏返しで、家では波乱含みの人物となってしまう。母親以外の女性の影がちらつく上、なかなか家に寄りつかないとなればなおさらです。
この本を、ただのグチ合戦ではなく、面白い本にしているのはスーさんの真面目さがあるからだと思います。良く思っていない父親のことも客観的に考えようとしている、だから読者には魅力的に見えて来る。スーさんは自分のことも分析し、理想的な父娘関係を押し付けようとしてきたのではないかと、考えたりもします。どこまでもフェア。
さて、この2人の距離感を測り損ね続けた親子は、お互いにとってベストな関係を見つけられたのか? 生きたり、死んだり、父親がいる全ての人におすすめの一冊です。
文:山本岳史(トキシラズ)
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