かきくけコラム :「ブックブック こんにちは」63

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毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。

「陽文庫-アキラブンコ」のみずいけさんと、ブックカフェ・トキシラズの山本さんがかわりばんこにつづる、本にまつわるコラム「ブックブック こんにちは」、63回目はトキシラズ山本さんです。

63のブック

『断作戦』古山高麗雄 文春文庫

『断作戦』
発売日: 2003/2/7
著者: 古山高麗雄 著
出版社: 文藝春秋
ページ数: 366ページ
サイズ: 文庫
ISBN: 978-4167291044

八月だからというわけでもないですが、今回は戦争の小説をご紹介します。古山高麗雄さんは最近知った小説家で、本好きの方に「この本好きだからあげるよ、さっと読めて面白いよ」と言われて、本書『断作戦』をもらったのがきっかけです。さっと読めたわけではないのですが、ご紹介します。

舞台は1980年初頭、主人公は二人です。一人目の主人公・落合一政は定年退職後に自らの戦争体験を『雲南戦記』というタイトルで出版、文章のうまさもあって、少しずつ読まれるようになっていました。もう一人は、同じ福岡県に住む白石芳太郎。落合とは同じ部隊に参加し、一緒に帰国した戦友です。彼もまた戦争体験をまとめ、本にしたいと考えていました、が、なかなか書けない。書いてみたものを新聞記者の知り合いに見せるも、「短すぎる」とダメ出しをうけ、落合にも相談しますが「真実を飾らず、思いのまま伝えよ」と、いかにも‘できる側の人’のアドバイスを頂いて帰ってきます。

二人は本を書くこと、読んでもらうことが、戦死した友への供養であり、またその遺族の心を軽くする、という話をよくします。と同時に、戦争について考えることが自らの責務であり、決してやめてはいけないという思いもあります。

(以下引用)
“『雲南戦記』を書いたら、なにか、解放されたような、楽になったような感じがする。一政は、そういう気持ちになっては、戦死した戦友に悪いと思い自戒した。”

“最近は、戦争を思い出す時間が少なくなってきているのである。それが歳月というものであり、人間というものなのかもしれないが、のどもと過ぎて熱さを忘れては、戦没者に申し訳ない”

実は、戦争から三十年以上が過ぎても、心は戦争に囚われ、またそうでなくてはならないと思い、がんじがらめになっているのです。

そんななか、同じ戦線で死亡した、浜崎常夫という少し変わった戦友の妹が、東京で生きているという情報がもたらされます。二人はその妹に会い、浜崎のことを話さなければと思い、東京行きを決めます。

二人は戦争の呪縛から解放されるのか?私は、浜崎の妹とのやりとりが、登場人物も、そして読者も、思いもよらない方向から、彼らを救う光になっているように思えました。ぜひ一読いただき確認してみてください。

文:山本岳史(トキシラズ)
ブログ ブックカフェ・トキシラズ

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姫路生まれ・姫路そだち。姫路→大阪→徳島→姫路。
肌の弱い自分が必要なものを近くで買えるとうれしいなーと、肌にやさしい日用品「あさのは商店」をしています。
趣味は、ウクレレ・縫い物・言葉の観察など。

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