かきくけコラム :「大人にも響く子どもの本 」29


毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。

小さなころから本好きで、常に本を持ち歩く子供だったという姫路在住のイラストレーター、赤松かおりさんによる、大人になってからこそ読みたい子供の本、「大人にも響く子どもの本」はじまりますー。

第29の発見 マイナス思考の人へ:その2『ハリネズミの願い』2014

8月は先月に引き続き、明るく前向きな主人公がでてくることが多い子ども向けの本では珍しい、主人公がマイナス思考のお話をご紹介します。

<あらすじ>
自分に自信のない臆病で孤独なハリネズミ。
みんなを家に招くために手紙を書くも、考えこみすぎて「来なくてもいいよ」
と書き足してしまい、さらには出せずに引き出しにしまいこんでしまいます。

<心に響く言葉>

親愛なるどうぶつたちへ
ぼくの家にあそびに来るよう、キミたちみんなを招待します。
ハリネズミはペンを噛み、また後頭部を掻き、そのあとに書き足した。

でも、だれも来なくてもだいじょうぶです。

――― P6『ハリネズミの願い』トーン・テヘレン作・長山さき訳、 新潮社、2014

ハリネズミのあらゆる負の妄想でなかなかストーリーが進展しないのですが、
私も友達を誘ったり、声をかけたりするのが「迷惑かも…忙しいかも…」と考えすぎてできないタイプなので、その気持ちがよくわかります。

「クラゲはどうやってくるの?」「バイソンが走って来て家を突き破るかも…」
まだ何も起こっていないのに、止まらない妄想にハリネズミが疲れ果てる姿が気の毒になります。
自分で勝手に悲観的な結論をだして落ち込んでしまうのも共感。

基本的に、想像力が豊かなことはいいことですが、ときには想像力が豊かすぎて
自滅してしまうことも。
勝手に自分で自分を追い込んで泥沼にはまりこんでしまいます。

でも、プラス思考になりたくても、努力でそうなろうとするのは難しいです。
最悪なのは、本当はマイナス思考なのに無理にプラスに考えようとして、そうできない自分を責めるようになることです。

自分には自分のペースがあって自分なりの心地よい距離感がある。
大切なのは自分の気質に合った生き方です。

すべてに向き合いすぎて疲れてしまうハリネズミがじわじわと愛しくなっていくお話でした。


文責:赤松かおり
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キーワード「赤松かおり」

赤松 かおり

赤松 かおり

本とお散歩と食べることが大好きなイラストレーターです。webやフリーペーパーなどで、イラストを描いております。

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