不定期で、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
小さなころから本好きで、常に本を持ち歩く子供だったという姫路在住のイラストレーター、赤松かおりさんによる、大人になってからこそ読みたい子供の本、「大人にも響く子どもの本」はじまりますー。
第49の発見:一人じゃ何もできないと思っている人へ:『はぐれくん、おおきなマルにであう』(1981)
11月は一人じゃなにもできないと思っている人におすすめしたい本をご紹介します。
<あらすじ>
「はぐれくん」は路上でじっとして、自分がぴったりはまる相手が迎えに来て
くれる日をまっています。
ですが、みんなそれぞれどこか欠点があって、ぴったりの相手はみつかりません。
そんなとき、「大きなマル」に出会います。
<心に響く言葉>
「きみこそが ぼくの
まっていたものだとおもうな」と、」はぐれくんはいいました。
「ぼくが きみの たりないぶぶんじゃないかな」
「でもぼくには、たりないぶぶんってないんだよ」
と、おおきなマルはいいました。
「きみが ぴったりおさまるところが ないんだ」「それはこまったね」とはぐれくんはいいました。
「きみとならうまくころがれるとおもったんだけど・・・」
「きみは ぼくといっしょにはころがれないよ」
と おおきなマルはいいました。
「でもきみは たぶん じぶんだけで ころがれるよ」―『はぐれくん おおきなマルにであう』p62、シェル・シルヴァスタイン・作、村上春樹・訳 1981、あすなろ書房
この本を翻訳している村上春樹のあとがきでは、
「マルくんもはぐれくんも、『大事なのはふさわしい相手(他者)を見つけることではなく、
ふさわしい自分自身を見つけることなんだ』と悟ります。
そしてようやく心穏やかな、平和な境地に到達します。哲学的ですね。」
と解説されています。
他者に含まれようとするけど、ちょうどいい、自分が納得する相手が見つからなくて右往左往するはぐれくんと、
自分はどこか欠けていると考えて、欠けているピースを探す大きなマル。
途中、いい感じの他者を見つけるけど、自分が成長してしまうことで居心地がわるくなってしまう。
はぐれくんは、自分が成長することを知り、誰かにくっつかなくても自分で動けることを知り、
自分が変われることを知っていきます。
読むと、自信がなくて、いつも誰かと一緒にいないと一人じゃ何もできないと思っていた
かつての自分をみているような気持ちになって、勇気づけられます。
最後のページで、自力で転がれるようになった二人が並んでいるのがうれしいです。
文責:赤松かおり
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