毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
「陽文庫-アキラブンコ」のみずいけさんと、ブックカフェ・トキシラズの山本さんがかわりばんこにつづる、本にまつわるコラム「ブックブック こんにちは」、9回目はトキシラズ山本さんです。
買い取った本
トキシラズでは、本の買取・販売もしています。本は持ってきていただければ、その場で買取します。
なぜ商売口上でスタートしたかというと、今日ご紹介する本は、お客さんから買い取った本だから。
本を買い取るとき少しお客さんとその本について話すこともあり、「この本はピンとこなかった」「これは面白かった」など短い感想を述べ合うこともあれば、この本には一言あると、大激論。などということもあります。
そして、買い取った本も「面白い」と言われてしまうと、気になってしまうもので、ついつい家に持って帰って近いうちに読む本の中に加えてしまい、読み終わったら自分の本棚に。というのもよくある話。これでは商売にならないですね。
09のブック
『本は10冊同時に読め!』成毛眞
この本を売ってくれた時のお客さんのコメントは「んー、なんていうか、面白いよ。でも、全部いいと思うわけでもなくて、、」と非常に予防線の多い褒め方でした、手放しで褒められるより逆に気になる。さっそく、読んでみました。
そしてわかりました。あのお客さんはこう言いたかったに違いない「私はこういう人間じゃないから!そこは間違えないで!」
この本を荒っぽくまとめると、本は買ってたくさん読む事。そして、幅広く読む事。そのために、読み飛ばしても構わない。それが成功者への道。といったところ。タイトルの10冊同時にというのは、10冊くらい読みかけの本をかかえているくらいが分量的にいいという意味です。
「並行して本を読んでいたら内容を忘れてしまうのでは?」「集中力を保てないのでは?」とよく聞かれる。だがそれは逆である。(中略)
1冊の本を読み通す場合、たとえ途中で集中力が途切れても、ダラダラと義務感と惰性で読み続けてしまう。その結果、読み終えるまでに時間がかかり、その割には内容をほとんど覚えていないという状況になる。(中略)
たいていの本には、文句なしに面白い箇所だけでなく、全体の構成上必要ではあるが退屈な箇所、筆者の筆の勢いが乗っていないような箇所がある。(中略)
つねにいずれかの本はクライマックスを迎えているようにすれば、読書習慣が途絶えることはないだろう。
(p.28,29)
私も同時に何冊か読むので、これは実感できます。この本を売ってくれたお客さんもうなずいたはずです。
手放しで褒めることがなかったのは、たぶん本書のこういうところです。
本書を読んでいる人は、本嫌いではないと思う。
だが、もし自分の周りに本嫌いの人間がいるのなら、そういう人とは付き合わない方がいい。足を引っ張るだけで、自分の人生に何ももたらしてくれないからである。
その人が芸術家やスポーツ選手など、ある分野に秀でているのなら、本を読んでいなくても付き合うメリットはあるだろうが (後略)
(p.58)
何てこと言いやがる、偏見がすごすぎるだろ!この本を売ってくれたお客さんもそう思ったでしょう、私もそう思います。と同時に、私はすごく面白いとも思います。
まず、本を読んでいる→人、本嫌いの→人間と表記することで、本嫌いは生物学的にはヒトではあるが、私(著者)とこの本を読んでいる人の仲間ではないと言いたげです。そのあとすかさず、自分に何ももたらさないと本嫌いへの怒りをぶつけます。過去に何かあったんでしょうね、とにかく怒り心頭です。なのに最後は一芸に秀でていればアリだ、と言います。この最後の一文があることによって、人としての打算的な弱い部分が垣間見える気がして、私は「なんか、かわいいな」と思ってしまうのです。
最後にもしあなたが、並行して何冊かの本を読んでいないなら、2冊目の本としてオススメの本があります。『村上ラヂオ』(村上春樹・文、大橋歩・絵)です。とても読みやすい平熱的文章で、同時に読むのを始めるにはもってこいですよ。
ちなみに成毛眞さんの村上春樹を読んだ感想は、
村上春樹の『ノルウェイの森』(講談社)を読んだときは1時間ほど立ち上がれなかったし、『海辺のカフカ』(新潮社)を読んだときは1週間会社に出られなかったほどショックを受けた。
(p.163)
だそうです。極端!
『本は10冊同時に読め!』
発売日: 2008年1月
著者: 成毛眞
出版社: 三笠書房
サイズ: 文庫本
ページ数: 171ページ
ISBN: 4837976913
『村上ラヂオ』
発売日: 2003年6月
著者: 村上春樹・文、大橋歩・絵
出版社: 新潮社
サイズ: 文庫本
ページ数: 217ページ
ISBN: 4101001529
文:山本岳史(トキシラズ)
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