毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
小さなころから本好きで、常に本を持ち歩く子供だったという姫路在住のイラストレーター、赤松かおりさんによる、大人になってからこそ読みたい子供の本、「大人にも響く子どもの本」はじまりますー。
第11の発見 忙しいなか体調を崩してしまった人へ:『グロースターの仕たて屋』1903
12月はクリスマス、来年2020年は子年ということで、ねずみのでてくるクリスマスのお話をご紹介します。
作者は「ピーターラビットの絵本」シリーズで有名なビアトリクス・ポターです。
<あらすじ>
イギリスのグロースターの町の貧しい仕立て屋のおじいさんは、市長さんの婚礼衣装の注文を受けてはりきります。
刺繍があしらわれた、絹の豪華な衣装です。
婚礼の日はクリスマス。頑張って作れば、間に合いそうです。ただ、ボタン・ホールをかがるための「あな糸」が足りません。
そこで飼い猫のシンプソンに、あな糸を買ってくるようお使いにだします。
けれどその間に仕立て屋は、シンプソンが夕食に食べようとつかまえていたねずみを逃がしてしまいました。
腹をたてたシンプソンは、買ってきたあな糸を隠してしまいます。
あな糸がないことにショックを受けた仕立て屋は、
すべての生地を裁断し、縫い始めるばかりに準備をしたところで、せまる納期を気にしつつ、寒さと疲労で熱をだして寝込んでしまいました。
そしてクリスマスの朝、熱の下がった仕立て屋と、悔い改めてあな糸を返したシンプソンは仕事場に行きました。
すると、恩返しにねずみたちが、クリスマスイブのうちにすばらしい上着とチョッキを縫い上げてくれており、
とても小さな字で「あな糸がたりぬ」と書いた紙が留められていました。
<心に響く言葉>
けれども、しごとだいの上には――――ああ、なんということだろう!仕たて屋は、大きなこえでさけんだ。
仕たて屋が 裁ったばかりの きぬのきれを ならべておいたところに―――まことに まことに うつくしい上着と、
ししゅうのついたサテンのチョッキが おいてあったのだ。いままで、グロースターの、どの市長どのも きたことが なかったような 上着とチョッキが。
―――P50『グロースターの仕たて屋』ビアトリクス・ポター作・絵、いしいももこ訳 福音館書店 1903
ねずみ版「かさじぞう」みたいなお話です。
ひょっとして自分にもこんなことが起きないだろうかと思ってしまいます。
すてきですよね。寝込んでいる間に、仕上げなくてはならないものができあがってるんです。
しかもとても良い仕上がりということですし・・・。
現代の私たちも、日々の忙しいときに体調不良になって、
仕事や勉強や、やらなければいけないことができなくなった経験があるのではないでしょうか。
病気やケガをしてしまったとしても、今まで頑張ってきたから一度休むサイン、タイミングなのだと思います。
休むことには不安を感じますが、また元気になったら、きっとその分取り戻せると思って、
長い目で見ることが大切です。
誰でも、病気をしたり年をとったりすると、当たり前にできていたことが思うようにできなくなります。
仕立て屋のおじいさんには、ねずみたちが手伝ってくれましたが、一人でなんとかしようと抱え込まないで、
健康や、いろいろな事情で不自由を感じている人のために、身近な人たちで手助けし合うのを贈りものにするというのもいいかもしれませんよね。
それではよいクリスマスを!
文責:赤松かおり
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