毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
小さなころから本好きで、常に本を持ち歩く子供だったという姫路在住のイラストレーター、赤松かおりさんによる、大人になってからこそ読みたい子供の本、「大人にも響く子どもの本」はじまりますー。
第14の発見 情報に振り回されたくない人へ:『ブロード街の12日間』(2014)
4月にご紹介するのは、さまざま情報が飛び交い、刻刻と状況が変わる今読みたい、実話をもとにした物語です。
イギリスのロンドンで「青い恐怖」と恐れられる疫病、コレラの大流行が1854年に発生しました。
当時の人々には「コレラの原因は悪い空気」と思い込まれていたために、瞬く間に広がってしまいます。
実際のコレラの原因は汚染された井戸水だったのですが、それを突き止めたのは、実在の人物であるスノウ博士でした。
<あらすじ>
13歳の少年イールは、優しく賢い少年ですが、両親を亡くし浮浪者のような生活をしていました。
ロンドンでコレラが発生し、身近な人が次々と亡くなっていくのを目の当たりにしたイールは、有名な医者スノウ博士に助けを求め、自らも助手として懸命に働きます。
<心に響く言葉>
「今日、わたしたちは、迷信ではなく、科学の力で病気の感染を防ぐんだ。いつかきっと、爆発的なコレラの発生が、過去のものになる日がくる。わたしもきみも、生きてその日を迎えることはできないかもしれないし、わたしの名前も忘れ去られているかもしれないけどね。そして、コレラを消し去るために必要なのは、コレラがどのように繁殖するかという知識なんだ」
―――P264『ブロード街の12日間』デボラ・ホプキンソン、千葉茂樹訳 あすなろ書房 2014
上に引用したのは、実際にスノウ博士が残した言葉です。
スノウ博士にコレラの発生を知らせ、原因追究に奔走した13歳の少年イールがこの物語の主人公です。
コレラの症状を調べ、患者のでた家にききこみして、発生の原因を突き止めていくイールとスノウ博士の姿はまるで探偵のようで、最後まであっという間に読めてしまいます。
思い込みや迷信、勘違いに振り回されていては本当に立ち向かうことができません。情報を正しく知ることこそが身を守る第一歩だと思います。
本当に必要な対策ができているか、大量にあふれる情報に混乱していないか・・・まだ完璧にわかっていないからこそ、自分で調べ、考えることが必要です。
混乱した状況でも心身の健康を保ち、すこやかに過ごしていくために、情報の取捨選択能力の大切さを教えてくれる一冊です。
外出自粛中の読書にいかがでしょうか。
文責:赤松かおり
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