毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
小さなころから本好きで、常に本を持ち歩く子供だったという姫路在住のイラストレーター、赤松かおりさんによる、大人になってからこそ読みたい子供の本、「大人にも響く子どもの本」はじまりますー。
第16の発見 自粛中巣ごもりして過ごした人へ:『フレデリック―ちょっとかわったのねずみのおはなし-』(1969)
今回ご紹介するのは、小学2年生の国語の教科書に採用されている『スイミー』で有名なレオ=レオニの作品です。
<あらすじ>
せっせと食料を集めて働くのねずみたちのなかで、変わり者のフレデリックだけがみんなと違って働きません。
「なんで働かないの?」とみんなが腹を立ててたずねると「色やお日様の光や言葉を集めてる」と答えます。
冬になり、巣に閉じこもって寒さに震えるのねずみたちにフレデリックが自分の詩を聞かせると、みんなは太陽の光を思い出し、あたたかくなりました。
<心に響く言葉>
またあるひ、フレデリックは、はんぶん ねむってるみたいだった。「ゆめでも みてるのかい、フレデリック。」みんなは、すこし はらを たててたずねた。
「ちがうよ、ぼくは ことばを あつめてるんだ。
ふゆは ながいから、はなしの たねも つきて しまうもの。」
―――P11『フレデリック―ちょっとかわったのねずみのおはなし―』レオ=レオニ、谷川俊太郎訳 好学社 1969
この自粛中、店が休業し、イベントが休止になって、ひたすらじっと家の中に閉じ籠っていた方も多いと思います。
病院、スーパーなど現代社会で生きていくうえで、お世話になっているものの大切さが改めてわかりました。
しかしさらに、巣籠もり中、小説、マンガ、映画、テレビ、音楽、ゲーム、演劇など、
一見なくても生きていけそうなものが、生活を豊かにしてくれることも改めて実感しました。
『フレデリック』は『アリとキリギリス』と似たようなストーリーですが、ラストは逆で、フレデリックは他ののねずみと同じように働けないけれど、色や光や言葉といった芸術をみんなに与え、人とちがった個性で受け入れられます。
他ののねずみも「働かないなら出ていけ」と言わずに「君って詩人じゃないか」と認めるのが心に残ります。
この物語は一見、なくても生きて行けそうなものの大切さを、シンプルに表現してくれているように思います。
文責:赤松かおり
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